全米平均の2倍、49州を上回る発生率
海事弁護士が運営する専門サイトクルーズ・ロー・ニュースでは、米運輸省のデータを各社の乗客・乗組員数で補正し、10万人あたりの性犯罪発生率を算出している。2025年6月までの1年間で、ディズニークルーズにおける発生率は、10万人あたり75件。この期間に限れば、アメリカの主要クルーズ大手のなかで最も高い、と同サイトは指摘する。
同サイトではさらに、この数値をアメリカ全体の性犯罪統計と突き合わせた。ディズニークルーズでの発生率は全米平均(10万人あたり41.4件)のおよそ2倍にあたり、50州それぞれの発生率と比べてもアラスカ州に次いで2番目に高く、全米49州を上回る水準だと指摘している。
こうした中発生したのが、冒頭の逮捕劇だ。
NBCニュースによると、米税関・国境警備局(CBP)は4月23日から27日にかけ、ディズニー・クルーズラインを含むクルーズ船8隻に捜査官を送り込んだ。児童性的虐待コンテンツ(CSEM)をめぐる継続捜査の一環である。CSEMは前節で触れたCSAMとほぼ同義だが、捜査機関によって呼称が異なる。
事情聴取を受けた乗組員は28人。そのうち実に27人が、CSEMの受領・所持・運搬・配布・閲覧のいずれかに関与していたと認定された。27人全員がビザを取り消され、母国へ強制送還されている。事情聴取を受けた28人の国籍の内訳はフィリピン26人、ポルトガルとインドネシアが各1人。氏名は公表されていない。
業界のモラル低下が浮き彫りに
CSEMの捜査のうち少なくとも1件は、サンディエゴ港のBストリート埠頭に停泊中の「ディズニー・マジック」号で行われたと、NBC 7 サンディエゴは伝えている。
4月28日には別の連邦機関も動いた。ICE傘下の国土安全保障捜査局(HSI)が「オペレーション・タイダル・ウェーブ」と名付けた作戦で、同港に停泊していた複数のクルーズ船の乗組員23人を逮捕したのだ。ディズニー以外のクルーズ会社の乗組員も含まれており、業界のモラル低下が浮き彫りになった。
NBC 7 サンディエゴが報じたICE広報サンドラ・グリソリア氏の声明によれば、HSIは全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)からの情報提供を受けてこの作戦に着手したという。逮捕者はロサンゼルスへ移送され、ビザも取り消されている。
ディズニー・クルーズラインは米NBCニュースへの声明で捜査への全面協力を表明し、「こうした行為に対してはゼロ・トレランスの(一切容認せず厳格に対処する)方針をとっている」と強調した。同社広報は、「対象者の大多数は弊社の乗組員ではないが、該当する者はすでに社を離れている」とも述べている。

