海事弁護士「ディズニークルーズは推薦できない」
被害件数が上昇傾向にある一因に、そもそもディズニー・クルーズラインが急速に事業を拡大している事情がある。
2024年12月、米ウォール・ストリート・ジャーナルは、同社が2031年までにクルーズ船を13隻へ増加させる計画を進めており、投資規模は数十億ドルにのぼると報じた。
ニューズウィークは2025年5月、すでにこの計画が実行段階に入っており、2020年以降に2隻が就航、乗客定員は約4割増えたと伝えている。その後、昨年11月には7隻目となる「ディズニー・ディスティニー」号が、今年3月にはアジア初拠点となる8隻目「ディズニー・アドベンチャー」号(シンガポール母港)が就航し、現在は8隻体制で運航している。被害件数の増加の理由の一部は、単純に利用者数が増えたためとも説明できる。
一方、クルーズ・ロー・ニュースを運営するキャリア24年の海事弁護士は昨年9月、長年の見解を翻した。「どのクルーズを薦めるかと聞かれれば、いつもディズニーと答えてきた」と振り返った上で、性的暴行・レイプの発生率が全米50州のうち49州を上回る水準にまで達した現状を踏まえ、「良心に従って、もはや誰にもディズニークルーズを推薦することはできない」と表明している。
ディズニー側は安全への配慮を強調する。ニューズウィークが2025年5月に伝えたところでは、同社の広報担当者は、「ゲストと乗組員の安全は何にも増して重要である」と述べ、船内の安全対策は絶えず見直しているほか、乗務員には最高水準を維持するための専門の研修を実施していると説明している。
2028年度、日本に初就航へ
こうした問題がアメリカで相次いで報じられるなか、「ディズニー・クルーズライン」の名を冠した新たな客船を日本にも就航させる計画が、着々と進んでいる。
今年3月24日、東京ディズニーリゾート運営元のオリエンタルランドは取締役会で全額出資子会社「株式会社オリエンタルランド・クルーズ」の設立を決議した。日本版のディズニークルーズは「ディズニー・クルーズライン・ジャパン」の名称で展開される。
設計のベースとなるのは、米ディズニー・クルーズラインの5隻目「ディズニー・ウィッシュ」だ。ディズニー社と協力しながら日本籍船への設計変更や船内の演出・デザインの作り込みが進められており、2026年度後半には本格的な建造に入る予定となっている。
テーマパーク情報サイトの英観光施設業界専門サイトのブルーループによると、客室数は約1250室、最大約4000人を収容できる規模で、投資額は約3300億円に上る。東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」の開発費3200億円を上回る規模だ。発着港には東京周辺の港が予定されている。

