直美のみなしご設定が描いたこと
あるとき、直美たちが看護実習を行っている大学病院に、村上穂乃果さんが演じる「夕凪」という女郎が担ぎこまれてきた。客が服毒による無理心中を図ろうとしたのである。医師は夕凪には目もくれず、客の男性の治療を優先するが、男性は死亡。夕凪、本名「セツ」は、直美の手厚い看護を受けて、一命を取り留めた。
当初は投げやりな態度だったセツも、直美の優しさに心を開くようになる。直美は、自分の母親は女郎で、男と逃げた末に生まれたのが自分だとセツに打ち明けた。
ある日、病院の中庭のベンチで、セツは直美にこう語りかける。
「みなしごだったんだよね」
直美が、いつも首にかけているお札を見せると、セツはこう続けた。
「私は……産めなかった。子ができたとわかったとき、どうやったら産めるのか考えてみたけど。怖くて……産めなかった。……よっぽどあんたに会いたかったんだね、おっかさん」
直美はその言葉に衝撃を受けたのだろう。たっぷり20秒以上の沈黙があった。そして最後、じんわりと涙ぐむ。6月11日放送の第53回の最後のシーンである。
実母の思いを知った感動の場面
直美は生まれてこの方、母を慕いつつも、捨てられたことを恨んでもきた。しかし、セツから女郎が子を産むことの難しさを聞かされたことで、産んでくれたこと自体が大いなる愛であったことに気が付いたのだ。「よっぽど、あんたに会いたかったんだね、おっかさん」というセツの言葉によって、母親に捨てられた哀れな子という否定的な自己認識が、劇的に変化した瞬間であった。
直美の母親が、なぜ直美を育てることができなかったのかはわからない。しかし、直美を託したのが教会であったことから、できるだけ安全な場所で育ってほしいと願っていたことはたしかである。
直美とセツのこのエピソードは、やむにやまれぬ事情で子どもを捨てざるをえない母親がおり、それは責められることではないということを伝えている。これは明治時代の女郎の話で、しかもフィクションだが、現在にも通じる話なのだ。

