なぜ被害者へ二次加害するのか
被害者であるにのみや氏も一度、生活保護を受けるところまで追い込まれたが、すべて自力でしなくてはならなかった。「困窮しているのは、性被害に遭って働けなくなったためだ」とは、とても役所の窓口で言い出せなかったという。
性暴力被害者は自分のせいでもないのに、このような立場に置かれ、人生に計り知れない影響を受ける。それなのに救済は少ししか進んでいない。「被害を口にしても、『同意があったのでは』とか『そんなの被害じゃない』とか、二次加害がひどい。被害を被害として受け止めない社会がある。そうした世間の目がある上、自分にも落ち度があったのではないかと悩み、自分が受け入れられない。穢れてしまったのではないかという意識も振り払えない。そうすると、こんなに苦しんでいるのに、助けがほしいというのも言い出せなくなっていく」と、にのみや氏は話す。
あいまいな対応は加害者も救わない
性犯罪は再犯が多いため、性犯罪者には更生プログラムの受講を義務づけるべきだとも、にのみや氏は考えている。実は榎本クリニックのように、性加害者の更生のための治療をする施設は全国でも少ない。こうした受け皿の仕組みが全国に広がっていけば、性加害をするリスクの早期発見・早期介入・早期治療につながっていく、と斉藤氏は話す。
性暴力被害者の救済を図り、加害者の更生を助けることが、性暴力に寛大な社会を変えることにつながる。佐野選手の不起訴の中身がわからないので、このように日本で実践されている性加害者更生の取り組みが、どれだけ今回の件に資するものであるかは不明だ。しかし、不透明な状況を放置したまま日本サッカー協会が取った措置は、一見、佐野選手に寛大なように見えるが、本当に佐野選手の今後を助けているのだろうか。


