性犯罪加害者の更生プログラム
1の「再発防止責任」は、認知行動療法を通じて再犯リスクのマネジメント方法を学ぶことで、加害を正当化する自分の認知の歪みに、専門家や受講する仲間の力を借りて、向き合うことから始まる。
2の「説明責任」は、そうして再学習する中で、なぜ自分は性加害をすることになってしまったのかを自分の言葉で語り、グループワークの中で繰り返し言語化する訓練をする。自分のしたことを正直に認め、対話を通してそれを言語化するプロセスを経てようやく、自分の行為の責任に向き合うことになるという。
3の「謝罪と贖罪」で大切なのは「謝罪は点ではなく線」ということだ。「加害者は許されて楽になりたい。だから許されることを前提に、被害者に謝罪する傾向がある。それなのに受け入れてもらえなかったら、一体何度謝ったらいいのか、となる」「でも許すかどうか決めるのは被害者。加害者は答の出ない中で、葛藤しながらその状態を受け入れる力を、プログラムを通して身につけることが必要。何が正解かを重視する日本の教育では、そうした力をつけることをしてこなかった」と斉藤氏は話す
斉藤氏の所属する榎本クリニックで2017年から、性加害者と対話や書簡往復を続けている写真家にのみやさをり氏は、「誰にでも失敗はあるけど、被害者を出すような失敗であるなら、被害者が納得できる形で社会復帰をすべき。自分のどういう意識がその行為につながったのか、認知の歪みを学んでそれを知らないといけない。もし佐野選手が何らかの更生プログラムにつながっていたとしたら、私は逆に頑張ってと言いたかった」と話す。
30年経ってもPTSDに苦しむ
にのみや氏は1995年に性暴力を受けて30年以上たった今でも、PTSDや解離性障害などに苦しんでおり、隔週での通院を続けている。「示談になったら救われる、ということなどない。性暴力被害者の『その後』は、例えようのない生きづらさが続く」。性加害者の男性たちと対話を続けているのは、被害者の「その後」がいかに大変か伝えるためだという。
実際、社会復帰のためにかかる時間と費用、サポートという点で、性暴力加害者と被害者の間では、圧倒的な非対称性がある。例えば榎本クリニックで治療を受けたとしたら、加害者は社会復帰の大体の道筋をつけることが可能だ。再犯リスクが低・中程度までの標準的なケースだと1年から1年半、ハイリスクの場合は3年、集中的に更生プログラムを受講。その後もメンテナンスのプログラムを続けると、再就職して社会復帰しても再犯するケースが少ないという。メンテナンスの際は期間は設けず、定期的に通いながら、専門家や受講者仲間とともに、セルフモニタリングに取り組む。

