「スパイの社交場」のような光景

なかなか会えない国の大使や外交官と顔つなぎできる貴重な機会なので、というのが最大の理由だったが、もう1つ、情報通の米国のCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)の駐在員らと会って情報交換するのも目的の1つだった。

大きなレセプションの会場には、必ずといっていいほど米国をはじめいろんな国のインテリジェンス(諜報)機関の人たちが姿を見せるのだ。

見ようによっては、「スパイの社交場」のような光景が繰り広げられることもよくあった。映画さながらのシチュエーションだ。

ひと口にレセプションと言っても規模や内容はさまざまだ。

国の名誉や威信をかけて、帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニなど超一流ホテルの大宴会場に千人規模の来賓を招いて祝宴を開く国もあれば、経費節減のため大使館や大使公邸、小規模のレストランを借り切るなどしてパーティーを開く国もある。韓国、シンガポール、タイ、サウジアラビア、カタールなどは前者で、毎年千人規模だった。

規模の大小にかかわらず、会場では民族衣装や芸能、音楽、ダンスが披露されたりして、大使館ならではの文化に触れることができる。

招待状なしでパーティーにまぎれ込む人たち

もう1つ、レセプションで忘れてはならないのは、お国自慢の料理だろう。

高級ホテルは衛生管理上、料理の持ち込みを許さないことが多いので、たとえばポーランドの場合、都内にあるポーランド料理店がホテルの厨房にレシピを提供して、ホテルの調理スタッフと本国の料理人のコラボによるお国の料理を提供していた。

料理
写真=iStock.com/Dar1930
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このように日本のシェフによって再現された異国の料理を味わえる機会はそう滅多にない。レセプションは自国の食文化を紹介する機会でもあるので、料理だけでなく、ワインやビールなど本国の飲み物も会場でふるまわれることが多い。

このため、料金を払ってでも参加したいという人も結構いるそうだが、時には「パーティー・クラッシャー」と呼ばれる迷惑な人たちが来ることもあった。

パーティー・クラッシャーは招待状なしでパーティー会場にまぎれ込んでしまう人たちのことだ。私は会場警備についての相談を受ける立場だったので、こういう連中をどうやって締め出すかで頭を悩ませた。

たとえば招待状を出したのは500人なのに、入場者が700人を超えてしまうと、料理があっという間になくなる。

これは大使館にとってたいへん不名誉なことなので、なんとかしてほしいと頼まれるのだ。

受付で招待状を厳密にチェックしても、トイレに行って戻ってきたような顔をして入ってきてしまう人がいる。