技術の主導権を中国EVに握られた

ドイツ自動車産業の揺らぎは、フォルクスワーゲンに集約される。同社の2025年営業利益は89億ユーロへ半減し、ドイツでは2030年までに約5万人の人員削減を見込む。中国では2024年に比亜迪(BYD)に首位を奪われ、2025年には吉利汽車にも抜かれて3位に転落した。これらの業績悪化と人員削減計画はロイターが2026年3月10日に詳報している。

ロイター(2026年1月12日付)によれば、フォルクスワーゲンの中国小売りシェアは2024年の12.2%から2025年に10.9%へ後退した。代わって首位はBYDの14.7%、2位は吉利の11%。中国市場のメーカー別勢力図そのものが入れ替わった。

中国乗用車市場信息聯席会(CPCA)の集計では、5月の乗用車販売は前年同月比22.3%減の153万台と8カ月連続で減少した。市場全体が冷え、同時に中国勢が強くなる。外資にとって最も厳しい組み合わせである。

ドイツ勢の苦しさは、販売減に加え、産業主導権の移転にも及んでいる。車の価値がエンジンやブランドから、電池やソフトウエア、車載AIへ移るほど、中国で開発し、中国企業と組む必要が増える。販売市場だった中国が、技術標準と製品設計を左右する場所になる。販売競争の激化が、そのまま技術と供給網の主導権争いに直結している。

さらに皮肉なのは、フォルクスワーゲン自身が中国勢の力を必要とし始めていることだ。中国で開発した車を欧州に持ち込むことや、中国パートナーと欧州の生産能力を共有する可能性に同社のオリヴァー・ブルーメCEOが言及したと、ロイターが2026年4月30日に伝えた

英フィナンシャル・タイムズは、中国EV新興の小鵬汽車(Xpeng)が欧州工場取得をめぐりフォルクスワーゲンなどと協議していると報じた。かつて中国で稼いだドイツの工場が、中国メーカーの欧州進出の足場になるかもしれない。産業主導権が逆流している。

自動車工場を止めるのは「不況」ではない

中国経済の停滞は、人口動態、過剰債務、米中対立、中国企業の競争力向上など複数の要因が重なった結果である。だが、習近平政権による政策の判断ミスが企業の投資意欲を冷え込ませたのは間違いない。

ロイター(2026年1月29日付)によれば、中国政府は2020年に導入した不動産会社向けの借入規制「三条紅線」(3つのレッドライン)を事実上撤回した。同政策は2021年半ばから不動産危機を引き起こし、多くの開発会社が債務不履行に陥った経緯がある。過熱を抑える狙いだったが、経済成長を支えてきた柱そのものを傷めた格好だ。

ゼロコロナも消費、物流、生産を同時に傷つけた。2022年春の上海ロックダウンを境に、中国の小売りと工場活動は急減し、サプライチェーンは深刻に混乱した。

中国の国旗と株価暴落のイメージ
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