トランプの中国に対する本音
――そうした状況を台湾市民はどう受け止めているのでしょう。
調査によれば、台湾市民の約8割が現状維持を望んでいます。ほとんどの台湾市民が現状の「ぬるま湯」を求めていることがわかります。対して、頼清徳総統の支持率は約40%。その支持者の一部が強く独立を求める勢力です。
とはいえ、現実として、台湾だけで中国を相手にすることはできません。独立には、日本とアメリカを巻き込むことが前提になっています。
そこで問題となるのが、アメリカです。いまのアメリカが本気で中国と雌雄を決しようとするでしょうか。
トランプ大統領にとっては、中国との対決そのものよりも、中間選挙で民主党に負けられないという思いのほうが強い。トランプ政権にとって「中国に勝つ」とは、中国との勝敗ではなく、民主党に勝つための材料を中国から引き出すことを意味しています。やはりトランプ大統領も国内世論を意識しているのです。
逆に、アメリカが中国の弱体化を図る際に、利用されやすいのが、反中感情の強い台湾、日本、フィリピンの3カ国です。特定の国への反感が強まると、それが国際政治の中で利用されてしまうリスクがあるのです。
――日本、台湾以外はどうでしょうか。
世界的に見れば状況は変化しています。26年5月にはトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談が行われました。オーストラリアやカナダ、イギリスも新首相就任を機に中国との関係修復に動いています。
25年12月にフランスのマクロン大統領が、26年2月にドイツのメルツ首相が訪中を果たしました。いずれも自国の経済人を大勢引き連れて訪中したのです。
国際社会の唯一の大人は中国
――変化の背景には何があるのですか?
中国と対立するデメリットを自覚したからだと思います。
またトランプ大統領がベネズエラを攻撃したあと、その隣国コロンビアに「次はお前だ」と圧力をかけ、イスラエルとともにイランへの大規模攻撃も行いました。さらに、NATO加盟国デンマークの自治領であるグリーンランドの取得をめぐって武力行使まで示唆しています。
そうしたなかで、「現在の国際社会に残された唯一の『大人』は中国だ」という声まで聞かれるようになりました。トランプ政権の予測不能な外交姿勢が各国の不安を高めた結果、国際的には、中国が「安心してビジネスができる相手」と評価されはじめています。
日本人は「好き」「嫌い」、「良い」「悪い」という感情で判断しがちですが、大局を見ながら自国の利益を守るしたたかな外交を展開していく必要があるのです。




