右も左も中国の「平和」を信じたくない
例えば、台湾問題に関する中国政府のスタンスは、「台湾の平和的な統一」です。これは1950年以降続いています。もし武力を使えば両岸関係は破滅的になりますし、中国自身の経済発展にも深刻なダメージとなります。中国としては、できれば避けたい選択です。
2025年12月に中国人民解放軍による大規模軍事演習「正義使命―2025」で軍が掲げたポスターには、「我々は戦いたくない。だが戦う準備はできている。演習は台湾同胞に向けられたものではない。しかし分裂の動きに対しては容赦しない」と書かれていました。
この「戦いたくない」に違和感を持つ方も多いのではないでしょうか。中国が台湾統一のためには「武力行使も辞さず」「手段を選ばない」という印象を持っている人がほとんどかと思います。
それは、日本の主要メディアが、中国側の発する強いメッセージばかりを報じ、中国が一貫して平和統一の道を探ってきた歴史を無視してきたからだと考えます。
2021年10月9日、辛亥革命110周年の記念式典の際の報道がわかりやすいので欧米メディアの報じ方と比べてみましょう。
例えば朝日新聞は、【習氏「中台統一必ず実現」】、読売新聞は【習氏「祖国の完全統一を必ず実現」】としています。
しかし欧米メディアの論調は異なります。例えばCNNは【台湾との「再統一」、平和的な手段で追求」、ロイターは【習氏、台湾「統一」を平和的に実現と強調】と“平和”という言葉を強調しているのです。
今の日本と似ている台湾
本来は記事の作り手がリテラシーを持つべきなのですが、商業ジャーナリズムの場合は正しさを決めるのは市場です。誰も読まない記事ばかりを出していたら、新聞社や出版社、テレビ局が潰れてしまいます。その結果、23年の日本の「言論NPO」と中国国際伝播集団の調査によれば、日本は国民の9割以上が中国に悪印象を持つ社会になってしまいました。
台湾の状況も日本と重なります。
台湾の現与党・民進党を救ったのも「中国の脅威」でした。
2019年の香港民主化デモをきっかけに、中国への警戒感を強めた台湾市民は少なくありません。内政で迷走して支持率が落ちていた蔡英文時代の民進党は、「中国統治に対する脅威」を訴えたことで、再び支持を獲得しました。
そして現在の頼清徳総統は、前総統の蔡英文と同じことをやっていては、支持層が離れてしまうという危機感から、さらに中国を刺激しています。中国を「境外敵対勢力」と呼び、野党の国民党に「親中派」のレッテルを貼って敵意を煽るやり方です。

