「大切な場所を汚したまま去りたくない」

日本人の清掃文化は今大会に始まった話ではない。2022年のカタール大会でも日本代表は試合後にロッカールームを整然と片付けて退出し、FIFAが公式アカウントでその写真を紹介したと、UAE英字日刊紙のガルフ・ニュースは振り返る。

当時、ハリーファ国際スタジアムのロッカールームを日本代表が後にすると、ゴミは見当たらなかった。残されたのは、きちんと寄せ集められた水のボトルと、丁寧に畳まれたタオルのみ。11羽の折り鶴と、「ありがとう」と記された日本語のメッセージがそっと添えられ、大会への感謝を物語っていた。

スタジアムの清掃を率先して続けてきたある男性は、CNNの取材に応じ、子ども時代は学校の掃除時間が「毎分毎秒が嫌だった」ほど苦手だったと振り返る。

かつては学校の掃除当番が憎くてたまらなかったといい、「なぜこんなことをしなきゃいけないのか。日本の教室はもともとそんなに汚くないし、みんなゴミ箱を使っているじゃない」とも疑問に思った。ところが2008年以降、彼は五輪やワールドカップに足を運ぶたび、スタンドに残されたゴミを拾い続けているという。

「チケットを買ったからといって好き放題していい場所ではない。自分たちにとって、神聖な空間です。本気で情熱を注いでいるものなら、大切な場所を汚したまま去りたくない。だから、拾うんです」

生徒自身が廊下やトイレを掃除する習慣

米CBSニュースの取材に応じたダラス・フォートワース日米協会の嶋口仁菜氏は、日本人にとって掃除は「習慣というか、自然なこと」だと語る。実際、日本の学校では小学校から高校まで、生徒自身が廊下やトイレを掃除する。こうして幼少期から身についた清掃の習慣が、大人になっても自然に受け継がれているのだろう。

学校の廊下
写真=iStock.com/urbancow
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清掃の習慣は神道の精神にも根ざしていると続ける彼女は、「木や石など自然のあらゆるものに魂が宿ると考え、それは日用品にも及ぶ。一粒の米に七つの魂が宿るという言い伝えもある」とCBSに日本の感覚を説明した。

慎ましさやスタジアムへの敬意が米メディアに注目される一方で、純真に感情を昂ぶらせる日本人サポーターたちの姿もまた現地で好感を呼んでいる。初めて訪れたテキサスの日常に、彼らは目を丸くしていた。

ダラスでのオランダ戦にあわせ、多数の日本人サポーターたちがテキサス州北部へやってきた。彼らの素朴な驚きぶりは、アメリカのユーザーたちが注目している。ソーシャルメディアのXで好評だった投稿を、シンガポールの若者向けニュースサイト「マザーシップ」がとりまとめた。