変化したのは「価値観」ではない
これに対し「平均初婚年齢は年々あがっているのだから晩婚化と言える」という声も聞くのですが、細かく推移を辿ると、女性の平均初婚年齢は2000年27.0歳に対し、2015年は29.4歳。この期間は平均年齢が2.4歳も上昇していますが、2024年は29.8歳であり、2015年と比べてたいしてあがっていません。つまり、平均初婚年齢もすでに10年前から上げ止まっていたわけです。
要するに、直近10年で起きたのは、20代のうちに初婚に至らなかった場合は、後ろ倒しで30代で結婚することもなく、最終的にそのまま非婚化という構造変化です。「晩婚化だから……」などといつまでも悠長なことを言っている場合ではありません。
これを若者の価値観の変化だと論ずるのも的外れです。若者の結婚離れなどは起きていません。出生動向基本調査によれば、結婚に前向きな割合は、1990年代から男性4割、女性5割でほぼ一定です。若者の価値観が変わったのではなく、若者を取り巻く環境や構造が変わってしまったのです。
もっとも大きな理由は、結婚経済環境の変化です。昨今、インフレで物価高が叫ばれていますが、物価高になる以前に、この「結婚可能経済力」のインフレが起きました。
「結婚可能な年収」が400万→800万へ
SMBCコンシューマーファイナンスでは、20代男女を対象として、結婚しようと思える世帯年収について経年調査をしていますが、半数以上が「結婚可能な年収」としてあげているのは、2015年時点では400万円でした。20代の年収のボリュームゾーンは300万円台ですから決して無理な数字ではありません。
しかし、2024年になるとそれが600万円へと上昇し、直近の2026年には800万円に達しています。10年で倍増してしまいました。もちろん、この10年で20代の年収が倍増したわけではありません。ただ結婚するために必要な年収の意識が高騰したのです。
その意識は実態として表出しています。国民生活基礎調査より、2015年と2024年とで、20~30代世帯主を対象として、児童のいる世帯といない世帯の年収分布を比較すると如実に経済階級で、その可否が明確に分かれています。
2015年時点では、世帯年収300万円台でも60%が結婚して子どもを持てていました。それが、2024年には22%へと38%ポイント激減します。同様に400万円台でも37%ポイント減です。これら300万~400万円台の年収がもっとも人口的に多いにもかかわらず、そこが大幅に減少していることがすなわち若者の初婚減のすべてといっていいでしょう。
一方、年収800万~1000万円では15%ポイント増、1500万円以上だと20%ポイントも増加しています。これが何を示すかというと、経済階級上位の若者だけが結婚して子どもを持てる反面、ボリューム層である中間層の若者が結婚できなくなったことを意味します。いわば、あまりに結婚の価格がインフレしすぎて、もはや「結婚は贅沢品」と化したのです。

