水素は切り札になるか

代替エネルギー源の未来について考えるとき、政府、科学者、投資家の多くが、周期表でいちばんにくる「水素」からヒントを得ようとする。

水素は無味、無色で非常に燃えやすく、もっとも軽い元素として知られる。燃焼時に水蒸気しか排出しないため、クリーンな燃料源となる可能性を秘めた物質として、長きにわたり関心を集めてきた。宇宙に存在する原子の90パーセントを水素が占め、地球上では水(H2O)のかたちでもっとも多く見受けられ、水素ガスが発見されることはめったにない。

つまり、水素をガスにするのは大変だということだ。

水素パイプライン
写真=iStock.com/Petmal
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水素の燃料は、グレー、ブルー、グリーンという3つの主要なタイプが開発されている。

現在もっともよく使われているのがグレー水素だ。これは、「水蒸気改質法」と呼ばれる伝統的な方法で製造される水素のことで、天然ガスを分解して水素ガスを生成するのだが、そのプロセスでは化石燃料が使用される。

ブルー水素は欠点がないわけではないが、グレー水素よりクリーンだ。ブルー水素も天然ガスなどの化石燃料を原料として製造されるのは同じだが、製造過程で排出されるCO2は「CCS」によって大気から除去される。

CCSは、エネルギーの生産や処理工程で、化石燃料を大量に燃焼したときに発生する排出物をその場で直接回収し、貯留地へ運んで地下深く貯留する技術のことだ。この技術を使って大気をきれいにすれば、気候変動対策として掲げた目標を達成できるのではないかと期待が集まっている。

排出量を減らすだけで目標は達成できない

とはいえ、排出物の10〜20パーセントは、やはり取りこぼされるだろう。それに、排出量を減らすだけで目標が達成できるとは限らない。

化石燃料業界は、ブルー水素にご執心だ。なにしろCCSのおかげで、化石燃料を使いながらもその弊害を緩和できるのだ。たとえば、エクソンモービルの気候変動対策は、再生可能エネルギーではなくCO2排出量の削減を重視するもので、CCSをその主軸に据えている。

アメリカは2022年インフレーション抑制法を通じて、新規と既存両方の発電所に対して温室効果ガス排出量の制限を呼びかけた。

その規制は、CCS技術や水素燃料の分野に政府が投資することで、発電所で発生したCO2はその場で回収されて大気に排出されなくなり、発電所の燃料に水素が使用されるようになると想定したうえで制定された。

しかし、業界関係者に話を聞くと、そういう技術はまだ、大規模な生産で効果を発揮できる段階に至っていないと指摘する。実際、CCS技術や水素燃料に関し、予算が超過して中止になったプロジェクトや、目標を達成できなかったプロジェクトはいくつもある。