学区では10代の自殺が相次ぎ…
カリフォルニア州南部のインランド・エンパイア都市圏にあるこの小さな町では、多くの住民が地元育ちで同じ高校に通っていた。私が話を聞いた住民で、学校がこんなに早く始まらなかった時代を覚えている人はいなかった。早く始まるのは地区の10代たちを学校に送り届けていたバスの都合だと思っていた人もいたが、スクールバスはもう運行していない。
まったく意味がわからなかった。
年上の10代を持つ親たちに話を聞くと、肩をすくめながら、「その時期はもう過ぎた」と安堵している様子だった。けれども、静かに苦しんでいる10代たちがいることは、明らかだ。息子が高校1年生だった年、この学区では自殺が相次いで起きた。
日常的に多くの10代たちが、眠気と闘いながら何とか登校し、始業時間に間に合わせようとしていた。私は毎朝、学校の向かいにある開店したばかりのスターバックスに、生徒たちが列を作っているのを目にした。ほかの親たちに話を聞くと、遅刻が重なっている子もいれば、1時間目を避けるために、オンライン授業など別の選択肢を静かに選んでいる子もいることがわかった。
私はすぐに、これはひとつの学校や地域にとどまる問題ではないと気づいた。2015年8月、息子が高校に進学したのと同じ月に、CDCが公表した全国調査の結果によると、全米の中学校・高校の4分の3以上が、推奨されている午前8時30分よりも早い時刻に授業を開始していた。
小児科学会がリスクを勧告
調べるうちに、私は全米各地の親たちとつながり、さらに数十年前から蓄積されてきた研究成果にも行き当たった。多くの研究者、教育関係者、地域の人々と話し、実際に会う中で、この問題が臨界点に達しつつあることが明らかになっていった。長年にわたる慎重な研究を踏まえ、米国小児科学会は2014年、中学校と高校の始業時刻は午前8時30分より早くすべきではないという画期的な勧告を出した。その背景には、始業時刻が早すぎることと10代の睡眠不足、そしてそれに伴うさまざまなリスクとの明確な関係がある。CDCも、2015年に始業時刻に関する調査結果を公表し、この勧告に同意した。さらにその後、米国医師会と米国心理学会も、相次いで支持を表明した。
1990年代後半以降、全米各地では、すでに始業時刻を遅らせた学校の事例が積み重なっていた。しかも、その効果を示す研究の蓄積もある。始業時刻を遅らせることで、生徒はより多く眠れるようになり、学業成績が向上し、卒業率さえ高まった。それほど明確な健康上の勧告と確かなエビデンスがそろっていながら、現実には、私のような親がこの問題を提起しようとすると、取り合ってもらえないケースがあまりにも多くあった。

