世の中に期待しない人は孤独にならない

③仕事観が「会社軸」から「個人軸」へと移行:「会社」に依存する生き方から、「社会」に何を提供できるかという価値観への移行が進んだ。雇用延長などが進むなか、同じ「会社」に勤めながらも、かつての自分の地位との違いを痛感し、「社会のなかの自分」に意識が向くようになった。

④重視されるようになった日常の幸福感:コロナ禍を通じて、大規模なイベントや旅行よりも、食事、ガーデニング、読書など、日常のささやかな幸せに高い価値を見出みいだすようになった。そして、会社組織から解放され、自分で時間をコントロールする楽しさを再発見する人たちが増加した。「定年後は楽しい年月だ」と。

事あるごとに述べているのだが、私には痛切に感じていることがある。「世の中に意のままにならないことがあると自覚している人は孤独にならない」という真理だ。こうしたことを若者よりも確実に自覚しているのが、定年後の人たちだろう。

ゆえに、ビジネスパーソン時代よりもストレスが少ない生活のなか、伸び伸びと生きることができるはずだ。特に、定年後の人たちのための「インフラ」が整っている日本では――。たとえばイギリスには身分性が残り、ゆえに就職においても縁故入社が多い。

公園を歩いていたら老夫婦
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失敗より後悔するのは「やらなかったこと」

そして、下層の人だけでなく中流でも下のほうに位置する人たちの大学入学も難しい。そこで、まず最も実力が評価される軍隊で力を発揮し、大学に入学したりする。日本ほど身分制度が顕著ではなく平等な社会はないだろう。

であれば定年後の人たちは、起業するなどの「賭け」を除き、何にでもトライできるはずだ。

「やったことは、たとえ失敗しても、20年後には笑い話にできる。しかし、やらなかったことは、20年後には後悔するだけだ」(マーク・トウェイン/アメリカの小説家)

日本の定年後の人たちが孤独にならず、充実した生活を送っている理由は、このようなところに遠因があるのかもしれない。そして具体的には、以下のような要素が挙げられるだろう。

①継続雇用や再雇用で働き続ける定年後:定年後の日本人の多くが「社会との接点を持ちたい」という理由で、再雇用などの形をとって働き続けている。結果、こうした仕事を通じた社会参加が、自動的に孤独を防ぐ構造になっている。