「数こそが正義」を知略によって生み出す

①数的優位:最もシンプルな数の力

細かく説明するまでもなく、数的優位とはその名の通り「特定のエリアで、味方の数が相手より多い状態」を作ることです。「2vs1」、「3vs2」といった局面だったり、大きく言えばフリーの選手を作り出した「1vs0」の局面もそう言えるでしょう。

どんなに優れた名プレーヤーでも2人がかりで囲まれれば自由を奪われます。逆に、技術的に課題があっても、周囲に味方があまっていれば(+1の状態)、落ち着いて最善のプレー選択ができるでしょう。

現代サッカーの戦術の1つは、この数的優位をどこで発生させるかにあります。

ビルドアップ時の例:GKの活用、または、相手のプレスに対してミッドフィールダーが下がってきて対応する。

守備時の例:相手のエースストライカーやキープレイヤーに対して、守備側の選手が2人で挟み込み、ボールの経由地を潰す。

「数こそが正義」。この最もわかりやすくて強力なパワーを、知略によって生み出すのが現代戦術の醍醐味です。

今後はボール奪取や守備面でも、いかに「+1」を作り出せるかが重要になってきます。

「最も得意なシチュエーション」へ導く

②質的優位:「個」の輝き

どれほど緻密な戦術を練っても、ピッチのどこかでは必ず選手同士が対峙する局面が訪れます。そのとき、「個の能力の差」で相手を圧倒することを質的優位と呼びます。

これは単に「足が速い」「テクニックがある」だけではありません。圧倒的な体格や反射神経、「認知・判断・移動」の質などが含まれます。

ボールを持ったミシェル・プラティニを、カナダのランディ・サミュエルが追っている。
ピッチのどこかでは必ず選手同士が対峙する(画像=El Gráfico/PD-AR-Photo/Wikimedia Commons

攻撃の例:ドリブルの得意な選手が1vs1の状況または1vs2の数的不利な状況でも相手を抜き去ってシュートを打つ。

守備時の例:圧倒的な身体能力を持つセンターバックが、相手から1人でボールを奪い取る。

戦術の役割は、この「質的優位」を持つ選手を、いかにして「最も得意なシチュエーション」へ導くかにあります。