傷を一つずつ調べる法医学者の葛藤
めった刺し事件の場合、相手が動かなくなってからも執拗に刺し続ける加害者が多いため、出血がない傷も多数みられます。
このような大小の傷を一つひとつ比較しながら、最終的にどの傷が致命傷だったのかを法医解剖医は鑑定書に記す必要があります。
一つひとつの傷の検証に時間がかかって、地味に大変だということも大きいのですが、めった刺し事件の場合はそもそもそこまで調べなくとも死因自体はだいたいわかります。さらに、解剖の時点で犯人が逮捕されているケースがほとんどであるため、何十、何百もの傷を調べたところで、それが事件解決の重要な手がかりになることもあまりありません。
ただただ、刑事裁判のための後処理になっている。この時間をもっと別の解剖に使えばより多くの死因究明ができるのに。法医解剖医としては、そんな考えが浮かび、時折やりきれなさを感じてしまうのも正直なところです。


