刃物で襲われたら守るべき2つの体の部位

解剖の知識は、身を守るためにも役立ちます。

刃物をもった相手が自分に襲いかかってくる。

人生で絶対に起きてほしくない事態ですが、もしそのような場面に遭遇した場合、生存率を上げる方法はあるのでしょうか。

まず、原則として守るべきは「腹」よりも「胸」と「首」です。心臓から出た大きな動脈を刺されるのが最も危ないからです。

胸に両手をあてる男
写真=iStock.com/Manuel-F-O
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心臓は普段は肋骨で守られていますが、骨と骨の間をすり抜けてしまえば、刃物は意外とたやすく心臓に達し、即死に直結する可能性が上がります。前面、つまり胸側からはもちろん、背中から刺された場合も同じです。

首もまた注意すべきです。首には心臓に近い大きな動脈が通っている上、骨には守られていません。

一方で、お腹であれば相当深くまで刺されないと致命傷にはいたりません。腹部にも動脈は通っていますが、その手前にお腹まわりの脂肪や小腸、大腸があるため、刃物を刺しても太い動脈まで達するのはなかなか難しい。また仮に小腸や大腸などを刺されたとしても大きな血管が切れない限り即死はしません。

もちろん、そんな場面に遭遇したい人は誰もいませんが、万が一にでも刺されそうになったときは、逃げると同時にとにかく「胸」と「首」を守りましょう。

刃物が刺さっても絶対に抜いてはいけない

では、もしも実際に刃物で刺され、その刃物が刺さったままの場合、どのように対処すべきでしょうか?

体に刃物が刺さっているのですから、心情的には一刻も早く抜きたくなるでしょう。しかし、刃物が刺さったままの場合の基本は、「絶対に抜くな」です。動脈や心臓に刺さっているのであれば、無理に抜こうとはせず、そのままの状態で救急車を呼んでください。

大きな血管に刺さっている状態の刃物は、血流をせき止めるふたのような役割を一時的に果たしています。それを抜いてしまうと、血が一気に溢れ出して、大量出血を引き起こす可能性が極めて高い。

刺さっている刃物をできるだけ動かさないように、布などで周囲を押さえ、固定した状態を保ってください。

過去に私が解剖を受けもったケースで、女子大学生が自宅を訪れてきた元恋人に胸を刺され亡くなった痛ましい事件がありました。

被害者の母親が帰宅すると、家には胸にナイフが刺さった娘が倒れて「痛い、痛い」とうめいていた。母親はすぐに救急車を呼び、娘の胸に刺さっていたナイフを必死で抜き取りました。

体からナイフが抜かれた直後、娘は「お母さん、ありがとう」とだけ言って意識を失います。直後に救急車が到着して病院に運ばれ、手術が行われましたが、被害者は心臓からの出血により脳血流が低下し脳死状態となり、そのまま亡くなりました。