ぐっすり寝ることが脳と腸を若返らせる

メラトニンの強い抗酸化作用は、活性酸素を無害化して細胞を守り、体の酸化を防ぐことで、老化を遅らせる働きがあります。活性酸素は腸内細菌を減らす大きな要因のひとつですが、メラトニンはその抗酸化作用によって腸内環境を守り、結果的に認知症のリスクを下げていると考えられます。

さらに、メラトニンはアルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβやタウたんぱく質の凝集を防ぎ、神経細胞へのダメージを減らす作用も持っています。私たちの研究グループの実験では、メラトニンが脳内のスカベンジャー細胞「ミクログリア」(おそうじ役の細胞です)を活性化させ、アミロイドβを分解・排出する働きを高めることが確認されました。

また、メラトニンには、糖化ストレス(AGEs)を分解し、脳を糖化から守る作用があることも明らかになっています。つまり、メラトニンは「酸化」と「糖化」――この2つの老化要因から脳を守っているのです。

さらに別の研究では、メラトニンが記憶の中心である海馬に働きかけ、記憶の形成や維持を助けることもわかっています。よく眠ることで分泌が高まるメラトニンは、単なる“睡眠ホルモン”ではなく、脳と腸を若く保つ「若返りホルモン」なのです。

7時間半以上寝る人は死亡率が1.4倍に

それでは、どのくらい眠ればいいのでしょうか。その人が日中100%の能力を発揮できる睡眠時間には個人差がありますが、さまざまな睡眠に関する疫学調査の結果、これまで7時間〜7時間半がベストとされてきました。

たとえば、平均睡眠時間と6年後の「がん治療後」患者の生存率に関するアメリカの調査では、もっとも生存率が高いのは、6時間半から7時間半寝ている人だという結果が出ています。また、この実験で面白いのは、それより睡眠時間の短い人は1.3倍、逆に長い人は1.4倍、それぞれ死亡率が高くなることがわかったことです。

これは、寝不足はよくないが、そうかといって、長く寝ればいいというものでもないことを示しています。たとえば睡眠時無呼吸症候群患者では、夜間に数十秒間息が止まることが数十回も起こるため、睡眠の質が低下します。睡眠時間が8時間以上であっても、昼間はけだるくて何度も居眠りをしてしまいます。

一方で、睡眠の質が高ければ、6時間睡眠でも元気いっぱいの働き盛りの中高年者、健康長寿に向かって突き進む高齢者も少なくありません。一般的に、睡眠時間を横軸、死亡率を縦軸にしてグラフ化すると一目瞭然。6時間半から7時間半ぐらいを底にしたUの字カーブを描きます。「睡眠の質」を高めて、このくらいの睡眠時間を心がけると良いでしょう。

夜中の目覚まし時計
写真=iStock.com/BrianAJackson
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