多数政党の思惑だけで決めてよいのか
皇室典範は、「国民の総意」に基づくべき天皇・皇室に直接かかわる、唯一の包括的な法律だ。だからその改正は、何よりも国民の気持ちに沿った議論が必要だ。選挙ごとに勢力分布が変動する国会で、その時の多数政党の思惑だけで乱暴に決めてよい課題ではない。
前例を振り返ると、上皇陛下のご退位を可能にした皇室典範特例法の時は、民意の高まりを受けて、当時の大島理森衆院議長を中心として丁寧に「立法府の総意」をつくり上げた。そのため、衆参両院でほぼ全会一致で可決できた。現状は果たしてどうか。
「総意」とは名ばかりの取りまとめ
6月10日、国会を構成する全政党・会派による協議(全体会議)の場で、衆参両院の正副議長らによる「立法府の総意」なるものが、少なくない党派の反対を押し切って決定された。全13党派のうち、賛成したのは7党派だけだった。
「国民統合の象徴」とされる天皇・皇室をめぐる議論でありながら、拙速に異論を切り捨てる乱暴な取りまとめに終わったのは、禍根を残す。いったい何のための全体会議だったのか。
もともとこの会議では、国民の思いとは隔たりがある、無理で無茶な政府の提案を議論の土台にすえていた。
取りまとめの中身を見ると、政府案をそのまま押し通そうとする自民党などに対して、参院野党第1党の立憲民主党などが議席数では劣勢ながら、民意を背景として懸命に抵抗した様子がうかがえる。
たとえば、政府案を前提とした今回の皇室典範の改正は、本来の課題であった「安定的な皇位継承」につながるものではない。単に“目先だけ”の皇族数の減少対策でしかない。しかもかなり無理筋なプランだ。
その残念な事実を踏まえ、法案を採決する際に、附帯決議として「安定的な皇位継承を確保するための方策について、引き続き、検討すること」を盛り込むとしている。これは、まさに問題の“先送り”にすぎない、との批判もありえる。だが一方で、「問題はまだ終わっていない」「今後も取り組みが必要だ」と、政府にクギを刺す意味を持つ。
その意味で、野党側の努力による成果として、それなりに評価できる。
女性天皇の可能性を残す附帯決議
今の国会では、一夫一婦制で少子化なのに伝統でもない「男系男子」限定という、現在の皇室典範が抱えるミスマッチな“構造的欠陥”を、後生大事にそのまま維持しようとする勢力が大きな影響力を持っている。
この現実を直視すると、今回のゴマカシ的な制度変更で、そのまま「皇位継承問題は一件落着」と幕引きされる危うさがある。そうなると、今後の展望はいっさい閉ざされかねない。
それを避けて“次”につなげるために、この附帯決議は最低限どうしても欠かせない手当てと言える。
「安定的な皇位継承」のためには、先に触れた皇室典範の構造的欠陥が解消されなければならない。その欠陥を解消するためには、男系男子の縛りを解除して、女性天皇、女系天皇を認める以外に方法はない。
と言うことは、「安定的な皇位継承」が追求される限り、女性天皇、女系天皇の可能性は残る。附帯決議はその可能性をギリギリ守ろうとするものだ。
