23歳の若さで裏千家から宗名そうめい(教授者の証)を授与され、28歳の今では世界を飛び回って茶の湯を広める活動に従事――岩本さんのパワーと情熱には、「すごい」の一言しかありません。偶然出会ったのは、ある食事会でのこと。まさか目の前の青年が著名な茶道家だとは思わず、軽い気持ちで「僕もお茶が好きなんだけど」と話したことを覚えています。私の茶道の腕前は趣味とすら呼べない程度ですから、今思えば恥ずかしい限り(笑)。それ以来、定期的にお会いする機会があり、近況を聞かせてもらっています。

東京・御殿山トラストシティ内の茶室「有時庵」にて。
東京・御殿山トラストシティ内の茶室「有時庵」にて。

岩本さんのような若いリーダーたちと話していると、彼らがいかに“必死で”考えているかを実感します。今の時代は価値観がどんどん多様化していますし、日本経済は私が若い頃ほど好調ではありません。そんな複雑な環境の中でがんばっている後輩たちを支えていきたい。何か相談されることがあれば、いつでも喜んで応じます。

気候変動や戦争が生活を脅かす時代だからこそ、お茶という「日常」を愛でる文化の需要は高まっているそうです。岩本さんは茶の湯文化を世界に広める事業を通して、「武器と戦争ではなく、平和を維持する活動によって経済が回るような社会をつくっていきたい」といいます。決して簡単な道のりではありませんが、彼のような誰かが一歩を踏み出すことで、世界は動き始めるでしょう。いつか引退して時間ができたら、私も岩本さんにくっついて世界を回り、茶の湯を広めたいですね。(高家)

(構成=本誌編集部 撮影=宇佐美雅浩)