日本の終身雇用が抱える問題点
元いた会社の人間関係を当てにして生きていくという昭和の日本人らしい考え方は、もはや過去のものなのです。そうなると、定年で退職すると華々しかった人間関係が一気に終わり、会社の切れ目が人との切れ目になってしまうのです。
なぜ昭和の会社OBたちが退職してまで職場に押しかけてきたのか、そして、それがないと人間関係がなくなってしまうのか、その理由のひとつは、日本に終身雇用制度が生きていたからでしょう。最近では、大会社が1万人規模の首切りをすることも珍しくなくなり、日本の終身雇用制度も崩れようとしています。
けれども、終身雇用があることで会社への忠誠心が生まれ、仕事のクオリティが保たれるわけですから決して悪い制度だとは私は思っていません。終身雇用が少なくなってきてから、明らかに日本の景気は悪くなっているということもあります。
終身雇用、年功序列の前提として、若いうちは安い給料でサービス残業もするけれど、年をとったら仕事が楽になるのに給料は上がるという状況があります。それを信じて、若い頃は粉骨砕身で頑張るわけで、言ってみれば会社にお金を貸しているようなものです。それなのにリストラに遭ったら「話が違う」ということにはなりませんか。仕方ないと思って黙って受け入れず、「金を返せ」と言ってもいいのではないかと、私はつねづね不思議に思っています。
定年退職後に友達をつくり始めても手遅れ
もうひとつ、終身雇用であっても、もしもその会社が潰れてしまうと、若い頃に貸した金が返ってこないことになります。だから、会社が潰れないように皆、頑張るし、ブランドイメージを保とうとするのです。たとえばアメリカでも、オートバイメーカーのハーレーダビッドソンという会社は終身雇用で知られていました。だからこそブランドイメージを保とうとするし、世界中でその戦略が成功しているのではないかと思います。
日本でも終身雇用どころか、定年を廃止したYKKグループのような会社もあります。ファスナーそのものには特許があるわけではないのですが、YKKのファスナーは丈夫で滑りもよく、世界中でその品質が認められています。定年廃止を採択したような企業体制が、ブランドイメージを保つことにもつながっているのではないかと思います。
ただし、終身雇用制度の構造的な欠陥として、家族的経営体質と結びついてしまったということがあると思うのです。会社が家族のようになってしまった結果、社内の雰囲気がよくなるのはいいのですが、プライベートにまでその人間関係が引きずられてしまいます。そして、その人間関係が定年を機に切れてしまうと、孤独の道へまっしぐらになってしまう気の毒な人もいるということでしょう。

