貸出金が増えても、自己資本がそれを上回って増加すれば、自己資本比率は維持できる。しかし冒頭で述べたとおり、現在は有価証券の評価損が膨らんでおり、自己資本は縮小傾向にある。自己資本が小さくなるほど、リスクアセットを減らす必要に迫られるという構図。評価損が膨らむ状況から考えれば、貸し剥がし、貸し渋りが横行することは容易に想像できる。
すでに周辺からは貸し渋りの話が聞こえてきており、ある不動産会社によると、購入希望者がいても住宅ローンがおりないために成約に至らない、というケースが続出しているという。
昨年から中小企業の資金繰りを支援するため、信用保証協会による緊急保証が行われ、保証の対象は760業種に拡大されている。それでも貸し渋りの解消までには至っておらず、金融庁では、4月から6月にかけて金融機関が貸し渋りや貸し剥がしをしていないか調査を行うとしている。
中小企業が破綻すれば失業率は増加、融資がおりなければ不動産市況の回復も望めない。
(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)