「お腹のサイン」を見逃してはいけない
感情が身体に現れると言っても、その出方は人によってさまざまです。ただ、多くの人が不調を感じやすい場所には、いくつかの共通点があります。胃や腸、首や肩、そして心臓です。
これらはいずれも自律神経の影響を強く受ける部位であり、感情の揺れや未処理の緊張がもっとも反映されやすい場所だと言えます。
では、具体的な部位ごとに、身体が発する警告の意味を紐解いていきましょう。
まず注目したいのは、情動の波をもっとも敏感に受け止める「お腹のサイン」です。私たちの消化管には数億個もの神経細胞が張り巡らされており、これは腸管神経系と呼ばれています。
腸管神経系は脳からの指令を受け取るだけでなく、ある程度は独自に働くことができます。そのため腸は「第二の脳」とも呼ばれることもあります。
もちろん腸が脳そのものになるわけではありませんが、それほど複雑で自律的な情報処理を行っているということなのです。
脳が「危険」と判断し、腸へ伝令
さらに脳と腸は、迷走神経という大きな神経の束を通じて、たえず双方向にやり取りをしています。
迷走神経は脳と内臓をつなぎ、心拍や呼吸、消化などを整えるうえで重要な役割を担う神経です。とくに副交感神経系の中心として、心身を回復モードへ戻す働きに深く関わっています。
交感神経は身体を闘争や緊張へ向かわせるアクセルであり、副交感神経は休息や回復を促すブレーキです。
脳が「いまは危険かもしれない」と判断すると、視床下部や自律神経系が働き、身体は休息や消化よりも、まず身を守る方向へ切り替わります。
その結果、胃や腸への血流は後回しになり、蠕動運動や胃酸分泌、腸の動きのバランスが崩れやすくなるのです。
ここで重要になるのが、迷走神経の働きの質です。楽器の弦に心地よい張りが必要なように、迷走神経にも「トーン」があると考えられています。
トーンが高い人ほど、不意のストレスにさらされてもすばやく心を落ち着かせることができますし、逆にトーンが低いと不安に飲み込まれやすく、ストレスに対して脆くなりやすいと考えられています。
ところが、現代のデジタルライフは、この迷走神経を錆びつかせてしまいやすい環境です。

