鳥取で唯一CAR-T細胞療法ができる

看護師やHCTCを巻き込んで体制を整えてきたとりだい病院血液内科は、移植実績を積み上げたことで、23年には施設認定のカテゴリー1を取得した。その結果、可能になった新しい治療法がある。CAR-T細胞療法だ。

人体は異物を攻撃するT細胞を備えている。これを患者本人から取り出して、がん細胞の表面にある抗原を特異的に認識できるよう遺伝子を改変したのち患者に戻す免疫療法だ。従来の治療では困難だった症例でも高い奏効率が報告されているが、特有の副作用があるため、以前はカテゴリー1の施設でしか実施できなかった。

ただ、認定を取ってもCAR-T細胞療法が自動的に実施できるわけではない。河村は導入に向けて精力的に動いた。

鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 22杯目』
鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 22杯目』

「CAR-T細胞療法の製薬会社は外国企業。じっとしていても声はかからないので、こちらから会社にメールして交渉しました。患者さんから採取したリンパ球はすぐに海外に輸送し、CAR-T細胞が作られ凍結した状態で日本に戻ってきます。

投与直前まで凍結保存する必要があるので、病院と交渉して液体窒素の冷凍庫を買ってもらいました。まあまあ高いのですが、病院執行部の理解があって助かりました」

とりだい病院でCAR-T細胞療法を始めたのは24年。現在、鳥取県内でこの治療ができるのはとりだい病院のみで、導入後は月平均1例の症例がある。

新しい免疫細胞治療法は他にもある。薬剤投与でT細胞を活性化させる二重特異性抗体は悪性リンパ腫の一部や多発性骨髄腫に適応が可能で、これもとりだい病院では導入済みだ。

家庭を顧みずとも自己研鑽を

新しい治療法の情報にアンテナを張り、可能なかぎり早く導入することが血液がんの患者を救うことにつながる――。

河村のその信念は、体制が整ってきた今も変わらない。

「血液内科は若手が増え、現在は10人になりました。時代が違うので、私のように家庭を顧みずに働けとは口が裂けても言えません。実際、チーム制や当番制を敷いて負担は多少軽くなっています。

ただ、自己研鑽はしてほしい。それを強いることはできませんが、私自身が自己研鑽を続けることで、医師にとって無知は罪であることが伝わってほしい。ひそかにそう思っています」

(取材・文=村上 敬 写真=七咲 友梨)
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