好きな女子の前で“論破”してフラれる

地方で農場経営をしている地主貴族リョーヴィンは、社交が苦手でした。力仕事や熊狩りならお手の物なのに、社交界に出ると「おかに上がった魚」と言われるくらい何もできません。

いくら牛の繁殖が得意でも男性貴族から一目置かれることはなく、筋肉があっても美男子でなければ女性貴族にも相手にされないからです。

日没時に牧草地を歩くビジネスマン
写真=iStock.com/gremlin
※写真はイメージです

そんなこんなで恋愛と無縁のまま30歳を過ぎてしまったリョーヴィンにも、ひそかに心惹かれている女子がいました。親友の妻の妹であるキティです。女性全般を見下しているリョーヴィンでしたが、キティだけは特別でした。

リョーヴィンにとって世界には二種類の女性しかないということも承知していた。一種類は彼女を除いた世のすべての女性で、あらゆる人間的欠点を持った、きわめてありふれた女性たち、そしてもう一種類はひとり彼女のみであり、完全無欠、あらゆる人間的なものを超越した存在なのだ。

若者たちの集いに参加したリョーヴィンは、キティの女友だちの心霊話を非科学的だと一笑に付してしまいます。女性慣れしていないリョーヴィンは知らなかったのです。お目当ての女性だけをちやほやして周囲の女性たちをバカにすると、当の女性にも避けられてしまうということに。

間の悪いことに、その場には美形の青年将校ヴロンスキーが同席していました。ヴロンスキーは女性たちを擁護しようとして、まだ科学で解明されていない力だってあるんじゃないかと適当なことを言います。

理詰めで論破するリョーヴィンに、こっくりさんの実験でもしてみましょうよ、とにこやかに議論を回避するヴロンスキー。キティがヴロンスキーに恋をするのも、当然のことなのでした。

草刈りハイで共感力アップ

恋に敗れたリョーヴィンは地元に帰り、農業経営の合理化に没頭することにしました。

ところがリョーヴィンのえらそうな指示に農民たちは反発し、なかなか合理的なやり方を実行してくれません。

やむなくリョーヴィンは、農民にまじって草刈りに参加しました。なにごとも真面目な彼は、草刈りにも夢中で取り組みます。やがて草刈りハイに達したリョーヴィンは、いつの間にか農民たちと親しくなっていたのでした。

学のない農民たちにも通じ合えるところがあるとわかったリョーヴィンは、農民の娘と結婚すればいいと思うにいたります。ところがその矢先、偶然キティを見かけました。妻はやっぱりキティしかありえないと思い直したリョーヴィンは、キティの失恋のうわさを聞き、再び親友の家に行くことを決意します。