レポ取引の前提となる考え方は、会社そのものの信用力よりも、会社が保有している「価値が高い資産」の信用力を使って資金調達をするということ。つまりは、自社の信用力ではなく、保有する資産の「質」を用いて資金を調達するところがポイントなのだ。

ソフトバンクのレポ取引も、業績好調で信用力が高いヤフーの株式を用いるからこそ実現したのだろう。金融機関やSPCの取引先にとっては、ヤフー株を担保とすることで、通常の融資より取引がしやすくなる。ソフトバンクという会社全体の信用力から切り放して、そのヤフー株が持つ独自の資産価値で担保金の額を決められるシンプルさも利点といえよう。

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ソフトバンクのレポ取引の仕組み

一方、資金調達したい側にとっては、質の高い資産を用いることで、銀行から通常の融資を受ける場合などに比べてコストを抑えられる効果が期待できる。今回のスキームにも、そのメリットが表れている。

ソフトバンクはヤフー株を35.86%所有する同社の筆頭株主(13年3月末現在)。ヤフーは14年3月期の連結純利益が過去最高益を見込まれ、株価も年初の300円前後から500円台へ上昇している。ソフトバンクにとってまさに超優良な資産であり、資金調達に役立てるにはもってこいなのだ。

今回、ソフトバンクが調達するのは1000億円。一般的に考えられる会計処理としては「借方・現金1000億円」「貸方・短期借入金1000億円」と記載する。

なお、ソフトバンクは本スキームを08年から実施しているという。ソフトバンクはこれまでも携帯電話端末の割賦債権を流動化するなど、保有する資産を活用した多様な資金調達を行ってきた。M&Aなどの拡大路線を今後も取るならば、資金需要は依然として旺盛だと思われる。連結子会社のガンホー・オンライン・エンターテイメントなど、ほかのグループ会社の株式なども活用した資金化計画を展開する可能性も出てくるかもしれない。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
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