崩壊しつつある「シベリアの力2」の夢
カタール衛星放送局のアルジャジーラが伝えるところでは、ロシア大統領府報道官のドミトリー・ペスコフ氏はロシアのメディアに対し、建設の「明確なスケジュール」はまだ白紙であると認めた。
習氏は、石油・ガスなど資源面での連携を両国関係の「バラスト石(安定の基礎)」とすべきだと述べたものの、「シベリアの力2」の名前については、ついに最後まで一度も口にすることはなかったという。
市場の落胆は、ガスプロム以外にも広がった。ウクラインスカ・プラウダは、ロシア最大のパイプメーカーであるTMKの株価が6%下げたと報じている。同社はパイプライン向けの管材を供給する見込みで、投資家からは「シベリアの力2」計画の恩恵を大きく受けると期待されていた。
ほか、ロシア最大の石油会社であるロスネフチは2%、ガスプロム傘下の石油会社であるガスプロムネフチは1.5%、民間最大のガス会社でLNG事業の中核を担うノバテクは1.3%下落している。
たとえ「シベリアの力2」の交渉が今後動き出しても、完成までには8〜10年を要する大事業だ。ロシアが長年期待してきた「新たな輸出市場の確保」という構想は、こうして根底から崩れつつある。
ロシアの足元を見た大幅値引き要求
交渉の主な障壁は、明らかにガスの売却価格だ。
ウクラインスカ・プラウダは、中国がロシアに突きつけているのは、ロシア国内向け水準に近い価格だと指摘する。天然ガス取引の標準単位である千立方メートルあたり、約50ドル(約8000円。5月28日現在のレート、1ドル159.58円で換算、以下同)を中国側は提示。値引き後の価格として、中国が現行で支払っている額の実に約20%、ガスプロムが他の海外顧客に課している額の約12%という、極端に低い価格での取引を習氏は狙う。
だが、プーチン氏としては到底のむことのできない数字だ。中国向けガス価格は、新パイプラインを待たずとも、すでに採算割れの瀬戸際にある。
米シンクタンクの大西洋評議会が2024年5月に公表した分析を読むと、その内情がよくわかる。ガスプロムは価格データを公表していないが、同シンクタンクはロイターが独自に入手したロシア政府の内部資料をもとに数字を紐解いている。
この分析によれば、「シベリアの力」経由の中国向け年間平均価格は、2023年に千立方メートルあたり297.30ドル(約4万7440円)、2024年は271.60ドル(約4万3340円)と、1年でおよそ1割落ち込んだ。2014年の供給契約締結時には350〜380ドル(約5万6000〜6万1000円)が想定されていたため、当初の見立てを大幅に下回ったことになる。

