日本が持つ「親しみやすい」という武器

中国人客を失っても、壊滅的な打撃を受けなかったのはなぜか。日本の親しみやすいイメージに起因するとの分析がある。

豪ジェームズ・クック大学のホスピタリティ・観光マネジメント上級講師、ジルミヤ・カンブル氏はCNBCに宛てたメッセージで、日本が近隣諸国からの観光客の呼び込みに成功してきた要因として、近距離国際線の路線網が充実していること、円安に傾いていること、そして「近い・文化的に親しみやすい・安全」というイメージが定着していることを挙げた。

もともと多くの地域から訪問者を呼び込んでいる日本は、どこか一つの市場に完全に頼りきっているわけではない。同氏はこの多様さが、衝撃を吸収する緩衝材になったとみる。

それを裏づけるように、訪日客はパンデミック前をすでに約34%上回っている。マスターカードのアジア太平洋担当チーフエコノミスト、デイビッド・マン氏によれば、円安の追い風で一人当たりの消費額が膨らみ、日本は訪問者数の伸びを上回るペースで観光収入を拡大させている。

CNBCはイギリスの調査会社オックスフォード・エコノミクスの分析を取りあげ、円安が続く限り全体的な訪日客数は堅調に推移するとの見通しを伝えている。ただし、宿泊施設不足を背景に、現状水準からのさらなる増加は見込みにくいとも付け加えている。

こうした回復力を、CNBCはカンブル氏の言葉を引いて、「(中国客減は)相当なものだが、壊滅的ではない」(Significant, but not catastrophic)と見出しに据えた。

百貨店で起きた変化

国内の各店舗は、早くも訪問元の変化に順応している。最も鮮明に転換を遂げた例の一つが、百貨店業界だった。

新宿、伊勢丹
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アジア小売業界専門メディアのインサイド・リテール・アジアによると、高島屋の経営陣は今年1月の時点で、台湾をめぐる日中の緊張により、インバウンド消費が打撃を受けていると認めた。

大丸・松坂屋を展開するJ・フロントリテイリングも無縁ではなかった。2月には大半の店舗で来店客数が落ち込み、グループ全体の売上もわずかながら前年を下回った。

ただし、中国客で混雑しなくなった店内は、日本人にとって買い回りやすい空間となった。同紙は百貨店各社の経営陣による見解として、中国客の減少分は国内顧客の堅調な消費で補われていると伝えている。

実際、経済産業省の月次販売データを見ても、百貨店全体の売上は1〜2月、前年比で一桁台前半の増収を維持している。