韓国・台湾・アメリカから訪日客続々

ただし、中国以外の市場はなお底堅かった。

人数で真っ先に目を引くのが韓国だ。NBCニュースによると、1月の韓国からの訪日客は前年比22%増の118万人に達し、単月として過去最多を更新した。これまで月間110万人を超えた国や地域はなかった。

台湾も17%増の69万4500人、アメリカは14%増の20万7800人。主要市場からの訪日客は概ね二桁の伸びを見せた。

こうして中国からの旅行客の減少は、近隣アジア諸国からの訪日客の増加が補った。一方で消費の「額」を底上げしたのは、欧米豪の旅行者の増加だ。滞在が長く、一人当たりの支出も大きい長距離客が増え、全体の消費単価を押し上げた。

スキフトによると、2025年通年で欧州・アメリカ・オーストラリアからの訪日客は合計22%増加。訪日外国人全体の旅行消費額は過去最高の9.5兆円に達した。自粛要請の波乱があったものの、結果としてはこのような記録が樹立されたことになる。

こうしたマクロでの変化は、現場の事業者の肌感覚とも一致するという。東京・浅草で着物レンタル店を営む男性は、中国人客の減少ははっきり感じていると、NBCニュースの取材に応じた。

それでも、「タイやシンガポールなどからのお客様がいらっしゃるので、全体的な売上はそれほど変わっていません」と語る。客の顔ぶれは入れ替わったが、売上という観点では影響がなかった形だ。

中国人経営の民泊から上がる悲鳴

反面、明確に痛みを感じた観光業界関係者もいる。民泊経営者だ。

大阪中心部で約80の民泊を運営するリン氏にとって、自粛要請後の昨年11月末は、事業崩壊の序章であったという。

通天閣
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2025年末までにキャンセルされた予約は、実に600件超。消えた中国人ゲストは、頭数で1000人以上に上る。リン氏はブルームバーグに対し、「不動産や旅行業界に身を置く知人は、全員苦しんでいる」と語った。

日本では近年、民泊の騒音やゴミ、住宅街への観光客の流入により、各地で住民から困惑の声が聞かれた。リン氏のビジネスが壊滅的被害を受ける一方で、住民たちは長年待ち望んだ静けさを取り戻している。

MBSニュースの報道によると、大阪市の特区民泊(国家戦略特区において旅館業法の特例で行う民泊)の44.7%が中国系の個人や企業による運営との調査結果がある。中国政府による渡航自粛要請を受け、日本で事業を行う中国人が割を食う皮肉な状況が生まれた。

地域別では、関西空港の位置する大阪で影響が大きかったようだ。ホテル業界も余波を受けており、大阪観光局によると、なんばを中心に一部ホテルのキャンセル率は50〜70%に跳ね上がっていた。

だが、立場を変えれば風景は一変する。一部では、混雑が解消されたことで、余裕を持って観光地本来の美しさを味わえるようになったとの声が上がる。

東京に1年以上暮らすマレーシア人のカリン・ノーディンさん(33)は米ビジネスニュース専門局のCNBCに対し、東京のほか草津や蔵王といった温泉地でも中国人客の姿が減り、ホテル料金も落ち着いてきたと語った。宿泊料金はそれまで、中国本土の祝日に合わせるようにして急騰していた。