高島屋と三越伊勢丹のV字回復
そして3月、文字通り春の訪れとともに、業績は跳ね上がった。
高島屋の月次実績をインサイド・リテール・アジアが伝えている。全国13店舗合計で、免税売上高は前年同月比6.9%増、総売上高は同7.8%増。春節需要を取りこぼした2月の不振から、わずか1カ月での反転だ。
東京の2店舗が際立つ。日本橋店は前年同月比18.9%増と突出し、新宿店も同8.0%増。京都店9.3%増、大阪店7.7%増、横浜店7.3%増と、東京以外の店舗も軒並み好調だった。
三越伊勢丹も例外ではなかった。同紙によると、3月は全店合計で前年比5.5%増を記録している。
けん引したのは高島屋と同じく日本橋・新宿に構える基幹2店舗だ。地方にはばらつきがあったが、基幹の2店が全体を底上げしたという。百貨店大手2社がそろって前年超えという、鮮明なV字回復だ。
渡航自粛要請からわずか数カ月で、なぜ回復に至ることができたのか。CNBCは、各社の客層転換戦略が功を奏したと分析する。
渡航自粛要請が発表されるや否や、百貨店各社はASEAN向けの販促を強化すると同時に、欧米や東南アジアからの旅行者に響く品揃えへの切り替えを進めた。各社は中国客に頼らない収益基盤を築き、その成果が3月の数字に表れた格好だ。
「客層の入れ替え」は地方にも波及
客層が入れ替わったのは、何も百貨店に限らない。主立った観光地のそこここで、風景は一変した。
2月に広島を訪れたというシンガポールの大学生、チェリル・ングさんは、広島平和記念資料館の光景に目を見張った。「館内の3分の2くらいが西洋人だった」と、CNBCに語っている。
オックスフォード・エコノミクスも2月27日付レポートで同じく、広島の歴史的観光地に多くのアメリカ人・オーストラリア人・ヨーロッパ人が足を運んでいると指摘する。
同レポートはまた、例えば福島県には台湾人が訪れ、愛媛県のゴルフ場・温泉には韓国人が足を運ぶようになるなど、地域ごとに異なる国の旅行者が集まるようになっていると動向を伝える。
一部の地方でも、中国客への依存から急速に脱する動きがある。ブルームバーグによると、岐阜県の中国人宿泊客の割合は2019年の41%から、現在はわずか10%に落ち込んだ。静岡県でも71%から45%に低下している。
日本総合研究所の高坂晶子主任研究員は、今回の急減により、かえって観光の多様化が加速しうるとみる。同氏はブルームバーグに、「各地域が市場での立ち位置をどう打ち出すかという面で、さらなる転換を促す」との見通しを述べた。
一時的な減少分の穴埋めという狭い視点を超え、将来の土台づくりを見据えた戦略が進む。

