うつ病の自分を救ってくれた妻

――当初の予定では経験を活かして他国に渡るはずだったと思いますが、タイに残った理由はなんでしょうか?

こちらで知り合ったタイ人の妻の存在が大きいですね。もともと私は「40歳くらいで自分の人生は終わる」と思い込んでいて、スペインでサッカーをあきらめて、日本でビジネスの世界に飛び込んで、タイで働きはじめて、とにかく生き急ぐ日々を送っていました。そして、ある日突然うつ病になったんです。

そんなとき、精神面でも生活面でも寄り添って支えてくれたのがバンコクのビジネス交流会で知り合った女性でした。経営者としても人としても尊敬できる人で、私からアプローチして、結婚に至りました。それ以来ずっと私の人生にとって欠かせない、頼りになる存在です。そんな妻がいる国に暮らしたいという気持ちがありました。

日本の小型船をタイで売っている

――現在のお仕事について教えてください。

海外研修の事業は継続しながら、新たに中古船の輸入販売をしています。じつはコロナ禍で日本人対象の海外研修がまったくできなくなって。アメリカでの悪夢がよぎりましたが、最高の伴侶であり起業家でもある妻のおかげで起死回生できました。

彼女は以前に日本の中古船の輸入販売の経験があったんです。

コロナ禍でも漁師は海に出るので、船の需要はあった。そこで、日本の中古船をタイで販売するビジネスをはじめました。

――日本の中古船は、いくらで仕入れるんですか?

タダのものから100万円超まであります。平均だと50万円くらいですね。あとから気がついたのですが、日本は少子高齢化で趣味の釣り人や漁師がどんどん減っており、船が余っている。しかも、日本の小型船の多くはFRPというプラスチック製で、処分にかなりのお金がかかる。場合によっては、船の所有者さんはタダかお金を少し払ってでも引き取ってほしい事情があるんです。また、船の処分は所有者さんにとっても長年連れ添った相棒を失うようなもの。処分するより誰かに使ってもらえた方がいいわけです。

――中古の船でも需要はあるものなんですか?

はい。タイを含めた東南アジアではまだ本製の船が多いんですが、木製だと維持費にけっこうお金がかかるんです。日本の所有者さんは船もエンジンも大切に使う人が多いので、中古でも海外ではまだまだ現役で使えます。

トラックに積み込まれる日本の中古船
提供=須見智志さん
タイに輸入された日本の船