「回復と適応のバランス」が崩れた状態
さらに、ゴールデンウィーク中の生活リズムの乱れも影響を及ぼします。連休中に起こりがちな睡眠リズムの乱れは、心身の調整機能を不安定にし、抑うつ症状の発症リスクを約2倍程度高めることが示されており、4月を通じて蓄積してきたアロスタティック負荷と相まって、この乱れが症状を表面化させるきっかけになると考えられます(Walker et al., 2020;Breslau et al., 1996)。
このように、五月病とは、4月の過剰な適応ストレスによって積みあがった負荷が、連休による生活リズムの変化をきっかけに表面化する「回復と適応のバランスが崩れた状態」と捉えることができます。だからこそ、五月病を一過性の「気の持ちよう」として見過ごさないことが大切です。早い段階で心身の変化に気づき、適切に対処することが、長期的な不調への移行を防ぐための重要なステップであるといえます(Morgan et al., 2022)。
脳に「終わりの合図」を送る
五月病の予防で重要なのは、乱れた心身のバランスを日常の中で早めに整え直すことです。ここでは、無理なく実践できるアプローチを紹介します。
まず、土台となるのは、次のような基本的な生活習慣です。
・起床・就寝時間を極端に変動させない
・朝の光を浴びて体内リズムを整える
・週に数回、15分程度の軽い運動を取り入れる
これらを押さえたうえで、今回は取り入れやすい2つのポイントを紹介します。
① 仕事の「終わり」を意図的に作る
業務が終わった後も、頭の中で仕事のことを考え続けてしまう人は多いはずです。ですが、この状態は、想像以上に心身の回復を妨げることになります。
これは、未完了のタスクが脳内に残り続ける「ツァイガルニク効果」と呼ばれる現象で、脳は未完了の情報を優先的に保持しようとする性質があるため、オフの時間も脳内メモリを消費し続け、結果として休息の質の低下を招くと考えられています。
そこで有効なのが、脳に対して意図的に「終わりの合図」を送ることです。脳は区切りが明確になると、その対象を一時的に“完了したもの”として処理しやすくなる性質があるため、仕事の終わりに意図的な区切りを作ることが必要なのです。おすすめは以下のような行動を行うことです。
・仕事の終了時に行う動作を決める(例:PCを閉じる、デスクを整える など)
・終わらなかったタスクを紙やスマホに書き出す
特に「書き出す」行為は、思考を頭の外に出すことで認知的負荷を軽減し、考え続けてしまう状態を抑える効果が報告されています。
こうした“終わりの合図となる習慣”を持つことで、仕事と休息の境界が明確になり、回復がスムーズに進みやすくなります。

