誤解が招く過剰な「利上げ論」に警鐘

それを考えると、1ドル150円程度は経済安全保障の観点からも、国内投資を行いやすい環境をもたらしています。円安がインフレに与える影響も指摘されますが、ここにも誤解が多いのです。為替について、私たちは「150円」という“水準”で表現します。

他方、インフレは水準ではなく、前年から何%上下したかという“変化率”で語られる指標なのです。この両者を混同してしまうので、1ドル150円の水準が続くと、インフレ率も3%のまま永遠に続いてしまうかのように錯覚する人が多いのです。

水準と変化率は分けて考えなければなりません。すでに日本経済は150円前後の水準を軸に動いており、その状態で安定すれば前年との変化は小さくなり、為替要因によるインフレ率押し上げ効果は次第に弱まっていくはずです。

にもかかわらず「円安=永遠に高インフレが続く」という誤解が、過剰な利上げ論を招いています。ただし、160円を大きく超える円安だと家計の負担を大きくしてしまうため、財務省は積極的な為替介入で円安を止めることになりそうです。

ドルと円記号
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円安脱却の鍵は「国内消費や投資」の拡大

――なかなか円安が止まりません。止めるために、日銀が利上げに動くことはないのでしょうか?

金利の面では、やはり内需が拡大して、日銀が政策金利を物価水準の2%ぐらいまで上げられるという期待が生まれれば、「実質金利」がマイナスを脱する動きで為替に円高の影響を与えるはずです。実質金利とは「表面的な金利(名目金利)」から「予想物価上昇率(期待インフレ率)」を差し引いたもの、つまり、物価変動の影響を考慮した実質の金利のことです。

インフレ下ではお金の価値が目減りするため、物価上昇率が金利を上回ると実質金利はマイナスになります。ですが、この実質金利がマイナスの状況を抜け出せるという期待があれば、円の価値の増加への期待から、円が買われて円高になります。

ただし今は、そこまで内需は強くありません。実質金利がマイナスを脱する期待はまだ弱い状況です。それでは、なかなか円安が止まりません。やはり内需を拡大して経済効果を実感させないと、円高には振れないのです。