なぜ日本だけが経済成長できないのか

確かに、官僚がしっかりブレーキを踏んでおかなければ、民主主義はポピュリズムによるバラマキに陥りがちなのかもしれません。メディアにもそのような考え方が多く、「G7各国の財政赤字がなかなか減らないのは、政治がポピュリズム化してバラマキがされているから」という論調が蔓延はびこっています。しかし、それは正しくありません。

確かに、新自由主義的思想による経済政策運営は、政府の関与をできるだけ小さくし、効率的な民間経済の自由度を高めようというものですから、財政健全化路線と親和性が高かった。

ところが、現在のグローバルな経済政策の潮流は、多様化する中長期の経済・社会の課題を解決するための官民連携の投資と需要の拡大を目指す成長投資の競争です。成長産業や新技術への政府の投資が拡大していることが、世界各国とも財政赤字が減らない理由でもあるのです。

このように、世界的には政府の成長投資の拡大余地を残すために財政収支を一定の赤字に収めようとする柔軟性が大事になっているのに、先進国でプライマリーバランスの黒字化目標という硬直化した財政運営をしているのは日本だけです。

今までの政府や政治家もなかなかできませんでした。

金融の概念
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経済復活の鍵は「負債の質」を変えること

それはやはり政府の介入を最小限にし、規制緩和、民営化、自由競争を推進する「新自由主義」の発想にとらわれていたからですが、「自己責任」を重視し政府の役割を民間に任せるとなると、やはりプライマリーバランスの堅持となってしまうわけです。

しかし赤字の額を問題にするのなら、経常的歳出は税収・税外収入の範囲内に収めるとしても、成長投資は国債の発行で行えばいいのです。経常的歳出とは、将来の所得や成長をもたらしたり、将来のためにインフラを整備したりする投資的歳出以外のものです。経常的歳出を税収・税外収入の範囲内に収めることで、財政規律が保てます。

成長投資の是非は、国債の利払い負担を上回る便益を将来に残せるかで判断されます。上回れば、成長投資は国債発行ですることができます。そして、将来の便益の現在価値を計算する社会的割引率は4%と極めて高いため、現実的な水準に引き下げることで、成長投資のハードルを下げることができます。

成長投資のグローバルな激しい競争の中、日本だけが無用な足かせをはめて戦えば、競争に敗れ、国力のさらなる低下をもたらしてしまいます。とはいえ、油断すると今まで通りのバラマキになってしまう可能性があります。財務省は手綱たづなを締めなければならない。ただ締めすぎると成長投資まで抑制されるという矛盾に陥ってしまいます。