活気を左右する厨房と客の距離感

一方でタイムアウトは、広すぎる厨房の奥に調理スペースがある上に、五感をくすぐるシズル感も、活気も生まれない。そういった要素がなくても味は変わらないのだが、2mほど奥の薄暗い店内で焼き上げられるステーキと、20cmほどの目の前でパリパリ揚がる海老天・ふわっと丸くなる明石焼き。パッと見てワクワクするのは、どちらだろうか?

筆者撮影
タイムアウトマーケット店舗の基本仕様。重厚すぎて奥が見えない(写真の一部を加工しています)
タイムアウトマーケット内 覇王樹タケリア タコス
筆者撮影
タイムアウトマーケット内 覇王樹タケリア タコス

目につくような視覚の演出が少ないと、「この商品はプレミアムなのか! だから買う」といったPOP・商品写真・説明書きなどの情報提供がなければ、わざわざ高額商品を頼んでくれない。しかし、全店で統一された重厚なデザインのカウンターはそういったツールが少なく(動線上から見えず、カウンター前に立たないと分からない)購買に繋がる「食材・調理法・どんな層に人気があるか」といった情報を、ほぼ得られないのだ。

視覚も情報も少ないとなると、店員とのコミュニケーションが頼みの綱となるが、試しに外国の方をお連れして試してみても、「原材料の産地はどこですか?」「このスイーツと合うドリンクはどれですか」「アレルギー表示は?」といった踏み込んだ会話が、なかなか成立しない。

タイムアウトがリピーターを掴めなかった要因は、商品が高額だから、というより「その高額に見合う演出・情報提供ができていない」といった原因があるように見える。カウンターでのコミュニケーションが円滑でないのも、利用者の少なさ故の悪循環のようにも見えるのは、気のせいだろうか?

「高すぎる→客が来ない」は通用しない

比較してみると、スナックパークが「低単価+分かりやすいカウンター+活気ある食体験を提供」、タイムアウトが「高単価+見合った情報を提供できないカウンター+食体験を提供できていない」というところか。

この状態で低価格商品を発売すればよい、という訳でもなく、タイムアウトでスナックパークの390円のラーメンを販売したところで、見合った売り上げも食体験も生じないだろう。

なお、おなじ建物(グラングリーン南館)の2階にあるうなぎ店・ステーキハウス・寿司店などは単価5000円、1万円を越えてくるため、「タイムアウト」が高単価過ぎて客足が離れている、という言い訳は成立しない。このエリアは「関西人はケチ」という一般的な常識が通用しない、と言っていいだろう。

グラングリーン3階「うな富士」の「肝入りうなぎ丼」
筆者撮影
グラングリーン3階「うな富士」の「肝入りうなぎ丼」。7000円を越えるが、大満足の一杯だ

要はタイムアウトが価格なりのプレミアム感を演出できていないだけで、フードコートとして閑散としている理由は「存在を知られていない」か「意図的に選ばれていない」かの二択、ということになる。

「知られていない」状態からの脱出は、先日の記事公開後に開設されたX公式アカウントに期待するとして、タイムアウトが意図的に選ばれない“廃墟化”と呼ばれる状況に繋がった「閉店後の空きスペースへの対応」を、スナックパークと比べてみよう。

7店が一斉撤退、空きスペースを1カ月放置した代償

フードコートとして営業する以上、どうしても「不振店の退店・新規出店」といった事態は付きまとう。次に入る店舗を見つけられないフードコートも多い中、両者の実際の対応から「廃墟化させる・させない」ための経営姿勢を比べてみよう。

タイムアウトの閑散ぶりがSNSで取り沙汰され始めたのは、17店あった店舗のうち7店が2026年3月に一斉に撤退したのがきっかけであり、空きスぺ―スを埋める別のテナントも入居しなかった。

一般的なフードコートだと、店舗を移動・集約したうえで、デッドスペースを「イベント時のみ開放」扱いにするという手もあったが、タイムアウトは対策を講じることなく、「次の店舗が入店予定」といった張り紙さえないままに、このスペースを1カ月以上も放置。結果、「廃墟」として取り沙汰されるようになった。

このあと5月1日にラーメン店が開店。その後もイギリス料理店、タイ料理店などがテナント入居する予定であり、現状では賑わいを取り戻しつつある。タイムアウトの場合は7店が退店したエリアで週末にライブ・DJイベントを開催していたとはいえ、ここまで入りづらいフードコートのデッドスペースを野放しにした事例は、あまり聞かない。