使ってみると実感する最新AIの実力

4月上旬、米アンソロピックは、50程度の組織、企業に限定してミュトスを公開し、試験的な利用を開始した。IT先端企業や政府が自社・自国のセキュリティシステム上でミュトスを使い、脆弱性の検知や対応を実施するためだった。

一方、一般利用は見送った。限定公開を制限しなければならないほど、ミュトスのサイバー・セキュリティの問題検知性能は高い。悪意のある者が使うと、サイバー攻撃に発展してしまうだろう。

企業や政府は防御態勢をとるために、アンソロピックは試験利用の対象者を拡大しようとした。5月上旬時点で、日本も追加の提供先に含まれた。

ミュトスは、「クロード」に次ぐ、新しい汎用型推論モデルだ。クロードは、ソフトウェアの問題検知をはじめ、広範囲に高い性能を発揮した。実際に使ってみると、形式知(文字、数字などで明文化できる知識)で、AIは人類を超越しつつあることを実感する。

「クロード」アプリ
写真=iStock.com/Kenneth Cheung
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アンソロピックは、まだ登場していない「AGI(汎用人工知能)」への橋渡し役として、ミュトスを開発したのだろう。実際に主要な企業や政府機関がミュトスの試験利用を始めると、次々に実力が明らかになった。

NASAも使っているシステムのバグを発見

特に、サイバー・セキュリティの脆弱性を、たった1回の試行で発見した。これは予想を大きく上回るレベルだ。特にインパクトが大きいといわれたのは、最も安全なOSといわれる「OpenBSD」のバグ発見だ。

OpenBSDは、多数のIT技術者の協力と監修を積み重ねて開発されたシステムである。世界中で、重要インフラの管理などに使われている。米航空宇宙局(NASA)先端スーパーコンピューティング部門など、世界最先端の研究所や主要企業のサーバーを構成している。

ミュトスはこのOpenBSD上の脆弱性検知において、27年間認識されていなかった問題を発見した。ミュトスは従来と比べ物にならない低コスト、短期間で、新しい知見を提供し、世界を変化させる力を持つ。それは、より頑健なITセキュリティの構築に寄与するツールになると考えられる。しかし、常に良い方向に使われるとは限らない。