知っているようで知らない食物繊維

腸の健康を維持・向上させ、さらには糖尿病を予防する食べ物・栄養素として、いの一番に挙げられるのが食物繊維です。食物繊維は、腸の健康に関わるだけでなく、糖尿病予防にも大きな役割を持っています。しかも、現代の日本人に不足している栄養素でもあるのです。

食べ物として取り入れた食物繊維は、最終的に大腸まで到達し、多くは便のもとになりますが、一部は腸の善玉菌によって分解されて短鎖脂肪酸になり、吸収されて小腸のエネルギー源になります。

さらに食物繊維は善玉菌のビフィズス菌のエサとなり、結果として腸内の善玉菌が増殖し、腸内環境が改善されます。

お腹の前でハートマークを作る女性
写真=iStock.com/metamorworks
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ちなみに、小腸の一番のエネルギー源はアミノ酸の一種であるグルタミン(うま味成分のグルタミン酸ではありません)で、二番目が、食物繊維が分解されて生じる短鎖脂肪酸の一種である酪酸です。大腸の場合は、酪酸が一番のエネルギー源です。

つまり、食物繊維をたくさんとると腸のエネルギー源が十分に供給されるだけでなく、腸の善玉菌のエサが増えて腸内環境がよくなり、さらには糖尿病を予防・改善することにつながるのです。

では、実際に食物繊維の摂取量を増やすと、糖尿病にどのような影響を与えるのでしょうか。

食物繊維の増加で糖尿病の改善効果

2013年にブラジルの研究者シルバらは、2型糖尿病に対する食物繊維の効果をまとめたデータを提示しています。

対象研究数は13で、合計対象者は605例、平均年齢は62歳です。2型糖尿病の平均罹患りかん期間は9.2年で、食物繊維摂取量を増やした期間は、最短で1カ月半、最長が6カ月とされています。

その結果、糖尿病の状態を示す検査値の一つであるHbA1cが、食物繊維摂取量を増やした群(食物繊維を15g増加させた研究が多い)では、全体の平均としては0.52%程度改善する効果が認められました。この数値の正常値が5.6%以下ということを考えると、大きい数値といえます。

つまり、食物繊維摂取量を増加させることは、HbA1c値の改善に結びつくため、糖尿病の症状を改善させる効果が期待できるのです。

では、そもそも食物繊維とはどんなものなのでしょうか? 簡単におさらいしておきましょう。

「日本食品標準成分表」によると、食物繊維は「ヒトの消化酵素では消化されない食品中の難消化成分の総体」と定義されています。

カニの甲羅こうらやエビの殻の成分(キチン・キトサン)のように、動物性食品に含まれる食物繊維も一部ありますが、大部分は植物性食品に含まれています。