サウジが抱える「雪をつくる以前の問題」
ネオムは3月29日を発効日として、ダム建設の契約解除を通告した。適用されたのは「便宜的終了」。つまり、発注者の都合により、施工者に非がなくとも契約を打ち切れる条項だ。施工を請け負っていたイタリアの大手ゼネコン、ウィビルド・グループが明らかにした。通告を受けたのはウィビルドだけではなく、同エリアの建設に携わっていた他のゼネコン各社も同様だという。
ダム建設の中止と前後して、トロジェナでの開催が決まっていた国際大会の招致も併せて撤回された。2029年アジア冬季競技大会の会場に選ばれていたが、当局が開催断念を認めたと、英非営利報道機関のミドル・イースト・モニターが報じている。代替地としてカザフスタン最大の都市アルマトイが開催を引き受ける。
砂漠の山中でスキー場を運営するには、人工雪が欠かせない。降雪機を回し続けるには、膨大な水がいる。その水源として構想されていたのが、ダムで谷を堰き止めて造る人造湖だった。
総崩れする国家プロジェクト
ダムがなければ湖は生まれず、湖がなければ雪を降らせる水もない。すべてはダムという一点に懸かっていたが、契約解除でトロジェナのリゾート計画も国際大会も消えた。
もっとも、現時点でリゾート計画が完全に撤回されたわけではない。ダムの湖水に依存しないマウンテンバイクなど、一部の山岳アクティビティは依然として実施できる可能性は残されている。それでも、スキーリゾートとして大々的にPRしていたトロジェナが大幅な見直しを迫られることは必至だ。
直線都市のザ・ラインについても2024年4月、ブルームバーグが大幅な計画縮小を報じた。当初計画は170キロだったところ、2030年までにわずか2.4キロの完成を目指すという。仮にこれをもって建設完了となれば、実に約98.6%の縮退だ。ネオムの基幹プロジェクトが次々と見直しを迫られている。

