フランスでは短距離路線が「禁止」に
アメリカの航空会社がバスで地方路線を置き換えるなか、大西洋を隔てた欧州では、政府主導で短距離便そのものを廃止する動きが始まっている。
ただし、理由はまったく異なる。アメリカではコスト削減策だが、欧州では温室効果ガスの削減を目指す環境規制によるものだ。スイスの国際シンクタンクの世界経済フォーラムによると、航空業界のCO2排出量は、世界の輸送部門の12%を占める。業界は2050年までにネット排出量を2005年比で半減させる目標を掲げている。
こうした潮流の先陣を切ったのがフランスだ。米テレビ・ラジオ放送局のCBSニュースによると、同国は鉄道で2時間半以内に代替可能な国内線を法律で禁止した。乗客は高速鉄道への乗り継ぎを求められる。廃止対象はパリのオルリー空港発のボルドー、リヨン、ナント行きの3路線。
3都市はいずれもフランスが誇る高速鉄道網のTGVでつながっており、これを使えば飛行機よりはるかに短い時間で着く。
もっとも、この禁止法は額面どおりには機能していない。CBSニュースによると、禁止措置には適用範囲を大きく狭める条件がいくつも設けられている。代替の鉄道が十分な本数と定時性を備え、旅行者が日帰りで目的地に丸8時間滞在できる場合にのみ適用されるのだ。
形骸化する「排出削減」
さらに致命的な抜け穴がある。鉄道で代替できるかどうかの判定で基準となったのが、シャルル・ド・ゴール空港(CDG)構内の駅だった。パリ市内には主要ターミナル駅が7つあり、高速鉄道はそこから四方に延びている。だがCDG空港駅から出る路線は、それとは比べものにならないほど少ない。
結果として、オルリー空港からボルドーへの直行便は禁止されても、CDG空港からボルドーへは堂々と飛べてしまう。影響を受けたのはオルリー発の3路線のみで、いずれも法の施行前にすでに運休済みだった。エールフランスやルフトハンザ、ライアンエアーなどが名を連ねる航空業界団体「エアラインズ・フォー・ヨーロッパ」の暫定代表、ローラン・ドンセル氏は、この法律を、「象徴的な禁止措置」と一蹴した。同氏は航空機の排出ガスに対する、「真の、そして重大な解決策」を支援するよう、各国政府に訴えている。
抜け穴はほかにもある。同法が禁じるのは直行便のみ。途中で別の空港を経由する乗り継ぎ便には、手が及ばない。この除外規定により、排出削減をうたう法の趣旨が完全に骨抜きになっている。
一例としてパリ―リヨン間では、オルリー発の直行便がかつて1時間弱で両都市を結んでいたところ、「無駄」とみなされ廃止された。ところが現在、オルリーから南部のニースを経由しリヨンへ折り返す迂回便は、合法的に運航されている。この迂回便では計3時間15分もかかる。
高速鉄道なら2時間で着く距離を、余計な離着陸を挟みながら3時間以上かけて飛んでおり、排出削減とは名ばかりの規制だ。

