航空便の短距離路線が縮小しているワケ
出発空港で一度保安検査を通過すれば、バスを降りた先でそのまま乗り継ぎ便のゲートへ向かえる。保安区域の中では、飛行機で着いた乗客とまったく同じ扱いとなる。
バス便にも、一応の利点はある。長い搭乗の列や地上走行(タキシング)の時間が省ける分、近距離であれば飛行機より速い場合がある。コスト削減や排出量の低減にも寄与するとされ、航空ニュース専門サイトのシンプル・フライングによると現在、エア・カナダやサン・カントリー航空ともバス便を運行している。
バス便拡大の理由についてワシントン・ポストは、地域路線を支えてきた小型機(リージョナルジェット、RJ)がもはや使われなくなりつつあるためだと解説する。現在ランドラインが運行する区間はいずれも、中〜小規模の都市と大都市のハブ空港とを結ぶ路線だ。こうした区間では、リージョナルジェットによる運行が主流だった。
ところが、採算性の観点から、リージョナルジェットによる地域便は厳しい立場に立たされている。アメリカン航空のグローバル路線計画担当マネージング・ディレクターであるジェイソン・ライジンガー氏は2022年、米公共ラジオNPRの取材に応じ、ハブから車で1〜2時間圏(運行距離50〜75マイル、約80〜120km)の都市へ飛行機を飛ばす事業について、経済的な合理性がもはや成立しないと述べた。
さらに、同社をはじめとする大手3社は慢性的なパイロット不足に苛まれ、全米数十の中小都市への地域便の運休を余儀なくされてきた。ランドラインならドライバーのみで完結し、パイロット2名と客室乗務員1〜2名の人件費を削減できるほか、燃料費もジェット燃料より格段に安い。飛ばしたくても飛ばせず、仮に飛ばせても採算が合わない短距離区間で、バスが現実的な代替手段になっているという構図だ。
航空会社の不誠実な販売手法
もっとも、バス便だと知って喜ぶ乗客は少数派だろう。
予約画面には「ランドライン運行」との表示こそあるが、チェックインは通常の航空便と同じ手順で進む。従って、画面上の注記を見逃してしまうと、自分の「フライト」にバスが含まれていると気づく手がかりがほとんどない。
アメリカン航空は、バス便を含むサービスでは予約時に「プレミアムモーターコーチ(高級長距離バス)」と明示されていると主張する。だが、その主張と乗客の実体験との間には深い溝がある。
同社はABCニュースへの声明で、ランドラインとの提携は、「シームレスな乗り継ぎ」を提供するものだと説明した。荷物を最終目的地まで通しで預けられるスルーチェックインに対応し、運賃タイプによってはマイレージプログラム「AAdvantage」のマイルも貯まる。
しかし、すっかり飛行機に乗れると思っていた乗客は、困惑するほかない。第一、バスの旅と知っていれば、ウッダードさんのように3時間弱の乗車に7万円近くを払うかも疑問だ。高価なチケット価格を正当化するため、航空会社はあえて紛らわしい形で販売しているのかとの疑念すら湧きかねない。

