緊張するとおなかが痛くなるワケ

脳と腸の密接な関係のことを、医学では「脳腸相関」と呼んでいます。わかりやすく説明するために、多くの方が普段の生活で実感している「脳腸相関」の例を挙げてみましょう。

重要な会議や大勢の前での発表、大切な試験や面接を控えたタイミング……。こんなとき、急におなかが痛くなる症状に襲われたことがある人は、少なくないですよね。慌ててトイレを探すはめになり、スケジュールに影響を与えてしまうこともあります。

これが、典型的な「脳腸相関」の悪い例です。脳の感じた強いストレスが副交感神経を弱めてしまい、腸の働きが急に悪くなるというわけです。

反面、いい例はあまり実感しにくいかもしれません。普段からおなかを壊しやすい人なら「最近調子いいな」と感じるかもしれませんが、そこまででもない場合は、なかなか状態を感じ取りにくいでしょう。

ところが、「脳腸相関」のいい例は、まさにその「幸せだ」「充実している」と感じる頭のなかそのものです。なぜなら、私たちが感情や気持ちとして認識している状態を決定づけるための神経伝達物質の多くが、じつは腸で生産されているからです。

「幸せ」は腸で作られていた

「幸せホルモン」という名前を聞いたことがあると思います。その正体であるセロトニンのおよそ95%は、腸で作られています。セロトニンには、「交感神経」と「副交感神経」の2種類の神経を調節する働きを活性化させることにより、心のバランスを整える作用があります。

つまりは、腸が健康でいるとおなかの調子がよくなるだけでなく、自律神経も整い、「幸せ」を感じることもできてしまうというわけです。

脳腸相関においては、慶應義塾大学の研究チームによって、腸の情報がすべて肝臓に集まり、迷走神経を通じて脳へ伝わることが明らかになっています。近年のいわゆる「腸活」ブームは、多くの人たちがこのメリットに気づき始めたからだと思います。

腸は人体を病気から守る免疫器官としてもっとも大きい役割を担っていて、免疫を司る細胞の7割が腸に存在します。そして腸は、いわば「第二の脳」でもあります。腸を整え、よい血液を作り、自律神経を自発的に整えていくことが、心と体の健康を守るうえでとても大切なのです。

お腹の前で、腸のイラストを保持している
写真=iStock.com/SewcreamStudio
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