和と雅の絶妙なバランス

和と雅の2人の関係について私がずっと感じていたのは、「正しいことをしたい」という根本的な価値観が同じだということです。それぞれにやり方はまったく違う。和は感情が先に出て、後先を考えずに患者のために走る――「泣キチン蛙」と呼ばれるほどよく泣く、感情の豊かな人でもある。一方、雅はもっと周到で、看護婦会の設立時に労働条件を一から整えるような緻密さがある。

物語を読んだ方の中には2人の関係について「ボケとツッコミのバディみたい」とおっしゃる方もいるのですが、まさにそういう感じで、和の直情径行に雅がバランスを取っている面がある。でも、2人は見ている方向が同じで、同じ方向に向って歩いているからこそ、横には目を向けず、互いに隣に並ぶ相手について何かを書いたり、記録に残したりしていないのではないか。それが大関和と鈴木雅についての史料からも読み取れます。

桜井看護学校1期生の卒業写真。左から鈴木雅、指導者のアグネス・ヴェッチ、大関和
桜井看護学校1期生の卒業写真。左から鈴木雅、指導者のアグネス・ヴェッチ、大関和(写真=医療法人知命堂病院提供

もうひとりの同期生、広瀬梅

私が本を書く中で初めて知った人物が、和や雅と桜井看護学校の同期生だった広瀬梅です。梅は桜井看護学校では、和や雅よりも10歳年下の同期生で、卒業後は慈善活動に努め、後に渡米し、看護師・助産師として多くの日本人移民を助けた方なんです。