「返済の猶予」を手放すのはもったいない

どれも教科書的に感じるかもしれませんが、繰り上げ返済は、多額の現金を家に入れるかたちとなるため、後から後悔しても取り返すことができません。家計の全体像や優先順位が見えたうえで、資金がありライフプランにも適合しているなら、繰り上げ返済を検討されるといいと思います。繰り上げ返済するかどうかを決めるのは、最初ではなく、最後です。

これまで1%未満が当たり前だった変動金利型住宅ローンの金利が1%を超えたと聞けば、不安になるのは自然なことです。自分たちだけではなく世の中全体が変わっているのだと否応にも感じるでしょうし、今後の返済への不安も募ることと思います。

銀行の看板
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

ただし、不安だからといって、繰り上げ返済や借り換えといった「攻め」の一手にでることが、家計全体にとって正解とは限りません。ローンは必ずしも悪ではなく、返済期間はその分猶予をもてていると見ることもできますから、安易にその権利をつぶしてはもったいないです。また手元資金を減らし、将来必要な資金の準備を損なえば、かえってご自身の将来の選択肢を狭めてしまうかもしれません。

筆者がこれまでのご相談経験を経て実感しているのは、ご自身にとっての優先順位や守りたいものとリンクできなければ、家計の安心にはつながりにくいということです。まず必要なのは「何を目指すのか。何を優先するのか。どこから始めるのか」を整理することです。

“住宅ローン以外”に目を向けて

金利ある時代のいま本当に求められているのは、目先の利息負担を抑える「部分最適」ではなく、人生全体から逆算して過剰なリスクを避ける「全体最適」を考える視点です。

物価高の世の中、住宅ローン返済額よりもその他の支出額のほうが多く、影響は大きいはずです。住宅ローンだけに目を奪われず、まずは家計全体を棚卸しし、暮らしを守る順番を整えることが先ではないでしょうか。きっとこれから先、ささいなことでお金に頭を悩ませなくてすむ、“ファイナンシャルウェルビーイング”の状態に近づいていくはずです。

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