幼虫が増えるのを待って巣を襲った
クロスズメバチの白い巣の塊を瘦せグマは口にくわえて20メートルほど逃げ、こちらに背を向けて地面に座ると、ハチの幼虫を食い始めた。さくさく、ぱさぱさと秘めた音がする。
2分ほどで食い終わり巣のほうに目を向けたが諦めて、25メートルほど先のブナの大木の根本に仰向けにすとんと寝転がった。そして天に向かって両手をくねらせ、手踊りを始めた。合わせて首をゆっくりと左右に振ると、クマは恍惚とした表情で天を見透かした。踊りが終わって立つと、頭を垂れて溜息を漏らした。
瘦せグマは8月20日にはクロスズメバチの存在に気がついていながら、実際に採食したのは9月14日だった。あの場所で五体投地が始まったのは夏の終わりだった。クマはクロスズメバチの巣が大きくなるのを待っていたようだ。クロスズメバチの活発な巣への出入りから、内部にいる幼虫の量がわかるようだ。


