幼虫が増えるのを待って巣を襲った

クロスズメバチの白い巣の塊を瘦せグマは口にくわえて20メートルほど逃げ、こちらに背を向けて地面に座ると、ハチの幼虫を食い始めた。さくさく、ぱさぱさと秘めた音がする。

2分ほどで食い終わり巣のほうに目を向けたが諦めて、25メートルほど先のブナの大木の根本に仰向けにすとんと寝転がった。そして天に向かって両手をくねらせ、手踊りを始めた。合わせて首をゆっくりと左右に振ると、クマは恍惚とした表情で天を見透かした。踊りが終わって立つと、頭を垂れて溜息を漏らした。

クロスズメバチを食べ終えて手踊りを始める
クロスズメバチを食べ終えて手踊りを始める[出所=『家に帰ったらクマがいた』(PHP新書)]

瘦せグマは8月20日にはクロスズメバチの存在に気がついていながら、実際に採食したのは9月14日だった。あの場所で五体投地が始まったのは夏の終わりだった。クマはクロスズメバチの巣が大きくなるのを待っていたようだ。クロスズメバチの活発な巣への出入りから、内部にいる幼虫の量がわかるようだ。

【関連記事】
なぜ伝説の動物写真家はヒグマに命を奪われたのか…星野道夫さんの悲劇を呼んだ「餌付けされたクマ」の怖ろしさ
「子供を自分の作品」にしてはいけない…日本一の進学校教諭が見た「本当に頭のいい子の親」の意外な特徴
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」と電話で実況…人を襲わない熊が19歳女性をむさぼり食った恐ろしい理由
子供の命を奪った犯人とすぐに交尾する…ゴリラの母親が「死んだ子供」よりも「強いオス」を優先する残酷な理由
サルでもハゲネズミでもない…外見にコンプレックスを抱える秀吉が信長に付けられた「もう一つの呼び名」