“不治の病”の5年生存率は上昇した

ざっくりとした数字に意味があるかどうかは難しいところだが、全体として、がんの5年生存率は70%程度とされている。昔の正確なデータはないのだが、1950年代で2割程度、1970年代で3割程度だったと考えるのが妥当なようだ。

かつて白血病や悪性リンパ腫は不治の病の代表例だったが、いまでは5年生存率が4割から6割台にまで上昇している。ただ、この上昇機運がいつまでも続くかというと難しいかもしれない。がんの免疫療法が大きな進展を遂げたりすると別だが、そう簡単には進まない可能性もある。

三つめは、「がんは運である」ということだ。

がんは個性的なので、同じ種類のがんであっても遺伝子変異の種類がそれぞれに異なっている。また、必ずしも早い段階で見つけられる訳でもない。少し冷たく聞こえるかもしれないが、治る人もいれば治らない人もいる、という言い方が正しい。ただし、昔に比べれば、ずいぶんと治るようになった人が多くなってきているのは間違いない。

がんは2人に1人、とよく言われる。推測値ではあるが、より正しくは女性で2人に1人、男性では3人に2人というレベルにまで達している。これも過去の正確なデータはないのだが、1950年代では10~15%くらい、1970年代で25%くらいだったとされている。この最大の理由、がんの罹患率の上昇は高齢化が主な原因、というのはこれまで述べてきたとおりだ。

昔は、がんになるのは運が悪くて、治りにくい、というイメージだった。しかし、いまは、がんになるのが当然で、けっこう治る、という状況になっている。サイコロで言うと、確率6分の1の賽の目博打が2分の1の丁半博打に変わったくらい、というと、ちょっと不謹慎のそしりを受けるかもしらんけど。

「慢性疾患になった」も誤解を招く

がんは慢性疾患になったのか? これもときどき耳にする言葉である。しかし、やはり誤解を招くと言わざるをえない。

そもそも慢性疾患って何だろう? 広辞苑によるとえらく素っ気なくて、「徐々に発病し、または急性期から移行して長期間経過する病気」とある。日本国語大辞典では、「病気の経過が、半年ないし一年以上にわたる疾患。結核、関節リウマチ、腎炎、高血圧などの類。慢性病」となっている。

「慢性」をひいてみると、「症状が激しくなく経過の長びくような病気の性質」(広辞苑)、「急激に悪化したりはしないが、治癒にも長期間を要する病気の性質。また、一般に、好ましくない状態が長く続くこと」(日本国語大辞典)である。

慢性の対比語は急性なので、しつこく調べてみると、「急に症状を発して病気の進み方が速いこと」(広辞苑)と「病気が、急に症状を呈して激しく進行すること。また、その病気。一般には二~三週間の経過をたどるものをいう」(日本国語大辞典)となっている。