産業を区分することにもはや意味はない

ここで重要なのは、この変化が特定の産業の中で完結しないという点である。通信、自動車、IT、宇宙といった従来の産業区分は、それぞれが独立して存在することを前提としていた。しかし接続がすべての前提になるとき、それらの境界は意味を持たなくなる。車は通信の一部になり、通信はAIの一部になり、AIは人間の意思決定と結びつき、最終的には社会全体が一つの連続したシステムとして動き始める。このとき競争の単位も変わる。企業同士の競争ではなく、接続された構造同士の競争へと移行する。

この構造を最も端的に体現しているのが、イーロン・マスクの企業群である。宇宙を担うSpaceX、物理世界を動かすTesla、情報を流通させるX、意思決定を支えるxAI、人間との接続を試みるNeuralink、そして都市の構造に手を入れるThe Boring Company。これらは一見すると異なる産業に属しているが、接続という視点から見れば、一つの流れの中に配置されている。そしてその流れを途切れさせずに維持する役割を担っているのがスターリンクである。

ここで初めて、スターリンクの位置づけが明確になる。それは通信サービスでも、衛星事業でもない。むしろ、宇宙から人間に至るまでの一連の層を結びつけることで、全体を一つのシステムとして機能させるための条件である。この意味でスターリンクは、目に見える製品ではなく、ユーザーが意識することも少ない。しかしそれが存在することで、他のすべてが機能する。こうした存在は従来「インフラ」と呼ばれてきたが、ここで起きているのはそれをさらに一段引き上げたものだと言える。

それは、文明の動作を支える“見えない層”の形成である。

「接続」を握る者が社会の設計者になるのか

この層が安定して存在する限り、情報は流れ続け、意思決定は止まらず、物理的な活動は継続する。逆に、この層が途切れれば、どれほど高度な技術や制度があっても、それらは分断され、機能を失う。つまり、ここで支配されているのは通信ではなく、接続そのものである。

ここで改めて問うべきは、誰がこの接続を握るのかという問題である。これまでインフラは国家が担うものと考えられてきた。しかしスターリンクが示しているのは、民間企業が国家と同等、あるいはそれを補完する形でインフラを提供しうるという現実である。このとき国家は、自らの主権を維持しながらも、その実行条件の一部を外部に依存するという、新しい関係の中に置かれる。

この構造は不安定であると同時に、避けがたい。民間企業は速度と技術で優位に立ち、国家は制度と主権を保持する。その間で生まれるのは、支配でも従属でもない、非対称な関係である。そしてこの関係の中で、接続を握る主体は、結果として社会全体に影響を与える位置に立つことになる。

オフィスでスマホやタブレットを使用して打ち合わせをしている人たち
写真=iStock.com/Charday Penn
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