医学用語では「性別違和」

中学校入学まであまり時間がない。まずは診断書だ。私は先輩の開業小児科医にメールを書き、詳しく事情を説明した。その先生は私より10歳年上で、広い分野に知識が豊富で知恵のかたまりのような人だった。返事は数時間後に届いた。

書影
松永正訓『性別違和に生まれて 父と子で綴った23年』(中央公論新社)

メールには、光は性同一性障害で間違いないと思われること、今は性同一性障害という言葉は使わず性別違和という呼称が使われていること、学校に可能な限り配慮してもらった方がいいことが書かれていた。また、受診してくれれば診断書も書いてくれるという。

診断書というものは重みがある。これで光の性別違和が確定することになる。小学3年のとき、月経前に精神状態が不安定になったのは性別違和が原因だったのだろう。

ここで、トランスジェンダーという言葉についても触れておく。現在では性別違和の人をトランスジェンダーと表現すると思う。ただし念のために言っておくと、性別違和は医学用語で、トランスジェンダーは社会的・文化的用語であって医学用語ではない。しかしながら、性別違和とトランスジェンダーはほぼ同じ概念である。

2015年当時の今とは異なる状況

だが、この頃(2015年当時)、性別違和とトランスジェンダーは区別されていた。トランスとは超えるという意味である。反対側の性へ超えていった人、それによって満足やプライドを得ている人をトランスジェンダーと呼んでいた。そういう意味では、光は性別違和で苦しんでいたので、この当時でいうトランスジェンダーではない。

なお、この頃はまだLGBT(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender)という言葉は一般的ではなかったし、私も聞いたことがなかった。2015年に東京都渋谷区で「同性パートナーシップ条例」が作られてからしばらくすると、LGBTという名称が新聞などで少しずつ使われるようになる。つまり、光が中学校生活をするようになってから、私はLGBTという名称を知るようになった。LGBTQ(Queer/Questioning)という呼称はさらにそのあとに生まれてくる。

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