“イランびいき”は中国の首を絞める

ここで皮肉なのは、中国が「火を消す側」を演出して対米関係の安定にも資する余地を探った直後に、米国のいわゆる「逆封鎖」によって自らがコストを引き受ける側にもなったことである。

つまり、中国は停戦に前向きな姿勢を示したが、その見返りとして主導権を得たわけではなく、むしろ対米配慮のなかで痛みを背負いやすい立場に置かれた。ここに、中国の停戦介入の徒労感がにじむ。

加えて、中国にはイランだけを見て動きにくい事情がある。

サウジアラビアやUAEとの経済関係を見ても、中国は中東で「片側に振り切れない大国」であり続けなければならない。ロイターは2025年8月27日、サウジの2024年の対中輸出が570億ドルに達し、その8割以上が石油だったと報じた

UAE経済観光省は2025年8月31日、中国との非石油貿易が2024年に約900億ドルに達し、2025年前半も拡大を続けたと公表した。さらにロイターは4月13日、中国側がUAEとのエネルギー協力の深化を改めて打ち出したと報じている。イランを支えすぎれば湾岸アラブ諸国との関係を傷つけ、逆にイランを見捨てれば反米的な外交資産を失う。だから中国は、停戦を唱えつつ、誰にも決定的な一撃を加えない中間姿勢を選びやすい。

この中間姿勢は、一見するとバランス外交である。だが、停戦実務の観点から見ると、「最後の痛みを誰かに飲ませる力が弱い」という意味でもある。中国は交渉を後押しし、関係国に自制を促すことはできても、最終局面で当事者に譲歩を呑ませる強制的な仲介者ではない。

影響力は大きいが、あくまでも補助的な役割であり、事態に決定的な影響を及ぼすものではない。ここに仲介の限界がある。

イランに決定権はない

では、停戦の本当の争点は何か。多くの報道は核問題や制裁解除を強調するが、実際にはレバノン戦線が極めて重い。

ロイターは4月10日、イラン側がレバノンも停戦の議題に含めることを要求した一方、イスラエルと米国はヒズボラとの戦闘を米・イラン停戦の対象外とみなしていたと報じた。ここが核心である。ワシントンとテヘランが核で歩み寄っても、レバノンで火が残れば地域全体の停戦にはならない。

この論点は、戦況を読み解くうえで非常に重要である。なぜなら、「戦争を止める国」は必ずしも「いちばん困っている国」ではないからだ。むしろ本当に重要なのは、戦線を横に広げたり、逆に局地化したりできる国である。米国とイランの停戦が成立しても、イスラエルがレバノンで軍事行動を続ける限り、中東は「停戦したのに静まらない」というねじれた状態に陥る。

レバノン北部の都市、トリポリ
写真=iStock.com/Artaxerxes Longhand
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