脳裏に焼き付いて消えない解剖室でみた光景
シスプラチンは細胞障害性抗悪性腫瘍薬の一つ、がん細胞のDNAを壊す、抗がん剤だ。
「がんの薬物療法はほとんど注目されていなかった時代でした。シスプラチンがようやく日本で使えるようになっていたんですが、第一内科では誰も使ったことがなかったんです。ぼくは研修医でありながら、製薬会社から資料を取り寄せて、投与しました」
目の前の患者を助けたいという一念だった。しかし、しばらくしてその患者は亡くなった。解剖室で小さな女の子の手を握った妻がぼう然と立つ姿は今も中川の脳裏に焼き付いている。
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