第三に、積極的な財政拡大もインフレ期待を煽りやすい。景気浮揚を狙ったトランプ減税はもちろんのこと、イラン戦争などを背景とした軍事予算の拡大要請も、需要を押し上げてインフレが上昇する連想として働くだろう。
こうした背景があるからこそ、現時点でFRBが安易に利下げに踏み切ることは難しい。皮肉なことに、トランプ大統領は自らの政策や言動によってインフレの長期化リスクを高め、結果として自分の首を絞めているのである。
利下げ再開は「夏以降」が現実的か
利下げ再開の時期を展望するうえでのポイントは、エネルギー価格の高騰が、インフレ期待やエネルギー以外の品目の物価にどこまで波及するかである。
仮に中東情勢が4月中に落ち着きを取り戻したとしても、その経済への影響を見極めるには時間がかかる。経済統計に反映されるまでのタイムラグを考慮すれば、数カ月単位での慎重な観察が必要になるだろう。
こうした点を踏まえると、利下げの再開は現実的に見て、早くても夏場以降になると考えるのが自然だ。金利が高止まりすれば、株価への下押し圧力が残り、家計資産が棄損されることで消費意欲が冷え込む可能性がある。米国経済は消費主導型であるだけに、この悪影響は決して無視できない。
仮に夏場以降に利下げを開始できたとしても、11月の中間選挙までに景気回復の実感が国民に広く行き渡るかどうかは不透明だ。むしろ、夏場にかけてのガソリン価格の高騰や、輸送・原材料コストの上昇に伴う様々な物価上昇の記憶が鮮明に残ったまま、有権者が中間選挙の投票所に足を運ぶ可能性が高いと言える。
バイデン前政権が追い込まれた「インフレ」の難題は、FRBが賢明に政策を実施できたとしても、また、賢明に政策を実施すればするほど、トランプ政権にも重くのしかかることは間違いがなさそうだ。
2024年11月13日、大統領執務室へ向かうジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ次期大統領(当時)(写真=ホワイトハウス/Adam Schultz/PD-USGov-POTUS/Wikimedia Commons)

